先生を流産させる会
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| 叩かれるような問題作じゃない |
あらすじ ![]()
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ツイッター上で本作の映画化に対して賛否両論論じられていたこともあって、ならばと初日に鑑賞に行ってみた。場内は満員立ち見で、本作に対する興味の大きさが覗える。で、結論からすると思ったよりもずっとライトでエンタテインメントな作品だった。言葉はあまり良くないが、別に衝撃の問題作というほどでもない。元々2009年に愛知県で実際にあった出来事をヒントに映画化されたものだが、そもそも監督は「先生を流産させる会」という言葉そのものに大きなショックを受けたのだそうだ。それには全く同感である。「先生を殺す会」はあくまで先生個人の存在否定だが、「先生を流産させる会」は新たなる生命の否定に他ならない。むしろ生徒たちの持つ心の歪みは後者の方が遥かに大きい。
作品内では本来男子生徒だったのを劇中では女子生徒に変わっている。同性である女の子たちが妊娠そのものを「キモい」と言ってしまうその妙に生々しい心情は思春期だからと言うだけでは説明のつかない禍々しさを感じた。いずれにしても女性とたちの無邪気な笑顔の裏側に、どうしてそんな感情が巣食うのか。ただ物語では“先生を流産させる会”の5人全てがそうではなく、個人差はある。というよりリーダー格であるミヅキ(小林香織)の人格が大半であり、残りの4人は彼女に引きずられたと言ってよい。とはいえその無邪気な悪意こそが最も始末におえない。私のような世代的にも性別的にも違うオヤジはもちろん、かつて女子中学生だった女性の皆さんも人によっては理解し難いのではないか。
さて、少し意外だったのは、女性とたちが先生に仕掛ける悪意ある嫌がらせが2つしかなかったことだ。理科の時間にチョロまかした薬品を先生の給食のスープに混ぜたのと、椅子の背もたれに細工して寄りかかったら倒れるようにしたこと、これだけだ。もちろん流産させるどころか下手すれば先生が死ぬかもしれない悪質さだが、陰湿的というには手ぬるいと感じた。それどころか、この2回で先生の方が“先生を流産させる会”の存在に気付き、そのメンバーを特定して反撃を始めてしまうのだ。どうもこの辺がやけに脚本的にアッサリ風味だ。要するにこの程度では観ている私たちには女生徒に対する憎しみまでは湧かないし、反撃を試みる先生の姿からはむしろ大人の嫌らしさすら感じてしまう。
だからせっかくの「私は赤ちゃんを殺した人間を殺す。先生である前に女なんだよ」という強烈なセリフも、何だか言った先生の方がおかしいかのように感じられてしまった。やるなら徹底的には悪者になってもらう方が、女生徒たち自身の不安定な心のあり方が際立つと思うし、先生の復讐心も馴染むと思う。このやや弱いキャラクターの先生と生徒を押さえて強烈な印象と、とてつもないムカツキを残してくれたのがメンバーの一人のモンスターペアレンツだ。いやはやすべては自分の娘を中心に回っていて、悪いのは全て学校と先生いうスーパー理論は一体どこから来るのか。モンスターというよりただのバカ親なのだが、こんなバカが本作とは別に現実に多数いるのだから世の先生方には心から同情する。
というよりこの作品を観てすら、この女生徒たちのどこが悪いの?と言い出しそうで怖い。もっともこのバカが物語のキーマンになるのだから、これはこれでイヤらしい(笑)佐和子が女生徒たちを特定したあとはもう女と女の戦いだ。ただ女性同士の戦いというと普通もっと陰湿かと思いがちなのだが、案外そうでもない。むしろ佐和子が女生徒たちをどうやり込めていくのかを面白く観ていた。一つだけ思ったのだが、ミヅキが理科室から薬品を無断で持ち出すシーン、いくらなんでも危険物の管理が杜撰すぎやしないか?(苦笑)佐和子の策略?で孤立したミヅキは、最終的に仲間をも裏切り、彼女とタイマン勝負。見事佐和子を流産させることに成功するも、裏切った仲間の母親に襲われるのだった。
この時、ミヅキを襲ったのがくだんのバカ親だった。そしてそれに対して佐和子は身を挺して彼女を守るのである。あれまぁ、最後には自分の赤ん坊よりも生徒ですか…とこれにはいま一つ釈然としない。この辺が最初にエンタテインメントな作品と描いた所以だ。とことん徹底的に人間のどす黒さに迫るというよりは、エンディングに向かって希望を持たせる作りは綺麗にまとまっていた。例えばラストの胎児の埋葬シーンで、私はもしかしたらその胎児を見せるぐらいの毒はあるかと期待したのだが。結局文穂の心の闇はどこから来たのかは解らない。劇中でそうであるように、この年代の少女全員がミヅキのようでは無い。だとすれば彼女には彼女が特にそうなった理由があると思うのだ、単に思春期だからという以外に。それが観たかった。
個人的おススメ度
3.5
今日の一言:音楽が凄くいいです!
総合評価:70点
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