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2012年5月21日 (月)

虹色ほたる ~永遠の夏休み~

Photo 川口雅幸原作の人気小説を映画化。とある里山でタイムスリップした少年が、1977年の一夏をそこで過ごした姿を描いた青春ドラマだ。監督は『ONE PIECE ワンピース THE MOVIE デッドエンドの冒険』の宇田鋼之介。運命的な出会いをした主人公の少年と少女の淡い恋愛物語の行く末にも注目だ。
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時をかける少年

 あらすじ 

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これは殆ど期待していなかっただけに予想外に良い作品だった。主人公の少年ユウタ(声:武井証)がとあるキッカケで1977年にタイムスリップしてしまい、そこで夏休みの一ヶ月を過ごすという『時をかける少女』ならぬ「時をかける少年」の物語だ。まずこの作品を観て一番最初に誰もが感じるのはその人物作画だろう。まるである種の水墨画でも見るかのようなシンプルな画はクライマックスには劇画調に変化したりするものの、基本的には微細な表情を描き出すことには向いていないと思う。当然ながら好き嫌いも分かれるだろうし、むしろ嫌いな人の方が多いのではないだろうか。ただ私はこの作品に関してはこの画が良く合っている様に感じた。

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最初ユウタが向かったのはダム湖のある山里だ。目的は昆虫採集。今は亡き父と共にやってきたその場所で彼は不思議な老人にであい、所望されるがままに飲み物を差し出すのである。実はその不思議な老人がタイムスリップのキーマンなのだが、具体的なことは解らない。ともあれユウタは1977年に飛び、ダムに沈む前の村でさえ子(声:木村彩由実)という少女と出逢うのだった。先ほど画が合っていると書いたが、こうした山里の風景やタイムスリップといった日本昔話的というか、和風のSFを表現するのにはこのどこかアナログな画風が良くハマっていると思うのだ。さえ子だけでなく彼女の隣の家に住むケンゾー(新田海統)とは秘密の場所に虫取りに行くことで直ぐに打ち解ける。

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ちなみに、もっとも不思議な老人の力で、ユウタはさえ子の従兄弟ということが当たり前の世界観になっている。このまま単にタイムスリップした少年が楽しい夏休みを過ごし、親友ケンゾーができ、さえ子と淡い恋心が生まれて、最終的に現代に戻るだけならそう大した話ではない。まずユウタとさえ子の人物像の設定が上手く更に、それを村での楽しい生活の中に織り込ませながら描き切っているところが良いのだ。ユウタは事故で亡くした父に対する想いを、そして同じようにさえ子は事故で亡くした兄への大切な想いを胸に抱いていた。そしてその2人の死が無関係なものではなく、密接に絡んだものであることが判るのである。そう、即ちさえ子もタイムスリップでこの村にやってきた少女だったのだ。

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文章で書くと簡単だが、それが判るまでにはユウタたたちの村での生活が実に細かく丁寧に描かれていて、その中には真実を知らない段階からユウタとさえ子の心の中にほんの少しだけ芽生えたお互いに対する恋心も含まれている。種から芽が出て、その芽が土をほんの少しだけ押し上げ、やがて土から芽を出す、そんな様子を毎日の生活にのせて表現しているのだ。タイトルになっている「虹色ほたる」、そのあまりにも美しく淡い光は村の神主さんによればかつて村の危機に奇跡を起こしたのだという。ユウタとさえ子が「虹色ほたる」の様子を観に行くことは、2人の人生がそこに収斂するという伏線になっていた。物語は村がダムに沈む前の最後の村祭というクライマックスに向けて粛々と進んで行く。

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さえ子は兄への想いが強いあまり、例の不思議な老人に現代には戻らず死んだ兄の下へ行きたいと希望していた。それを知ったユウタはここで村の神主さんの言葉「離れていても 生きていてくれさえすればいい」を思い出す。今のユウタにとってさえ子はかけがえのない存在になっていた。それは奇しくも大切な人を同じ時に失ってしまった2人の間にだけ存在する数奇な、そして運命的な縁なのだ。ほたるの光の中で交わす2人の約束…現代に戻った時にはこの村での一夏の記憶は失われてしまう、それでもほたるの雄と雌の習性になぞらえて、必ずさえ子を見つけ出すという強い誓いだ。――現代。当然巡り合うべくして巡り合う2人。虹色ほたるの起こす奇跡は、もう戻れないけれどしかし決して失われることもない、時が止まったあの永遠の夏休みに誓った約束なのだ。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:あまり宣伝もないけど良い作品です
総合評価:80点

作品情報
キャスト:武井証、木村彩由実、新田海統、櫻井孝宏、能登麻美子、中井和哉、大塚周夫、石田太郎
監督:宇田鋼之介
原作:川口雅幸
脚本:国井桂
キャラクターデザイン:森久司
作画監督:森久司
画面設計:山下高明
美術監督:田村せいき
音楽:松任谷正隆
主題歌:松任谷由実
製作国:2012年日本映画
配給:東映
上映時間:105分
映倫区分:G

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