レンタネコ
ネコの魅力が十分!とは言い難い… |
あらすじ
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荻上直子監督作品ということで相変わらずゆるい雰囲気だった。主人公の女性サヨコ(市川実日子)は都会の片隅にひっそりと佇む平屋建ての一軒家に多くのネコたちとともに暮らしている。縁側から見上げた遠景に高層ビルが見えることから考えても都内近郊ではなく都心のようだ。昔からそこに住んでいるものの、そこだけぽっかりと時間が止まったようなスポットは確かに存在する。サヨコは何匹かのネコをリヤカーに乗せて川べりを「レンタ~ネコ、ネコ、ネコ」とちょっとチャルメラをパロったような声を上げて歩くのだが、そんな彼女からネコをレンタルした人々との繋がりをのんびりと描いたのが本作だ。ネコを借りたいと言ってくる人を心の寂しい人と言い切ってしまうのがちと気になるところではあるが、貸す方も借りる方も風変わりなのが面白い。
心の寂しい人を見つける→ネコを貸す→家に帰る→電話が来てもう一度お客さんと会う、細かい部分に違いはあるけれど大体この流れで話は進んでいく。サヨコは人の心の寂しさを「心の穴ぼこ」と称している。そして登場する人物はみな極々ありがちな寂しさ=穴ぼこを持った人々だった。夫と飼い猫に先立たれ、もう年なので新しい猫が飼えないからとレンタルする吉岡(草村礼子)は自分が死ぬまでの期限で、単身赴任中のサラリーマン・吉田(光石研)は家に戻るまでの期限で、そしてレンタカー屋の女店長・吉川(山田真歩)は“待ち人現れるまで”の期限でそれぞれネコを借りる。ユニークな表現だと思ったのは吉岡は彼女の作ったゼリーの真ん中に“穴ぼこ”が、吉田は彼の靴下に“穴ぼこ”が、吉川はランチ用のドーナッツに“穴ぼこ”が空いているところ。
それぞれ単純に穴が開いているという意味ではなくて、ゼリーには一人息子の好物だがその息子はもう家に寄り付かなくなってしまった寂しさが、靴下に穴が開いているのは単身赴任のオヤジならではの寂しさが、ドーナッツの穴は毎日一人ぼっちでランチをする孤独な女性店長の寂しさが込められていた。ただちょっと残念なのはネコがその“穴ぼこ”を埋めるといいながら、具体的にその様子が描かれていなかったことだ。レンタルされていったネコたちがどんな風にして借主と関わったのかを観たかった。何故ならネコたちはヌイグルミではなく個性のある生き物だからだ。そこが無いなら別に全部同じネコでいいし、むしろネコでなければならない理由も無い。
もう一つ思ったのが、ネコを借りて“心の穴ぼこ”を埋めることはあくまで一時しのぎに過ぎないということだ。私自身ネコが大好きで飼っているから解るのだが、確かにネコを抱っこしたり撫でたり話しかけたりしている時、心の寂しさは紛れるしとても癒される。けれどそこで間違えてはいけないのは、だからと言って問題が根本から解決した訳ではないという事である。ネコから離れれば現実は何も変わっていないことに嫌でも気付く。それをネコをレンタルした人の心の在り方が変わったというだけで片付けるのには無理があるし、そこまでネコに万能性を持たせるのはネコが可哀想だ。もっとも吉川だけはハワイ旅行が当たるという即物的な利益があったのだけれど…(苦笑)何だかネコの魅力を存分にだした作品だとは言い難かった。
個人的おススメ度2.5
今日の一言:う~ん…基本的に相性良くないなぁ
総合評価:59点
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