サイドウェイ/Sideways
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人も葡萄も良く似ているのかも |
あらすじ
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実は日本リメイク版の『サイドウェイズ』を先に観ていたので、大まかなストーリー展開は解ってはいた。ただ、日本版は日本人であることを含めて無理があったのだが、やはり欧米人が演じるだけでもシックリ来る。離婚した妻を忘れられない英語の教師マイルス(ポール・ジアマッティ)は小説家志望だ。彼のエージェントは出版社に小説の出版の話を持ちかけその返事を待っている。そんな彼が大学時代に同部屋だった悪友ジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は落ち目の俳優で結婚を1週間後に控えていた。万事に内向的なマイルスと、やたらと社交的なジャックと言う対照的な2人はバチェラー・パーティーとしてカリフォルニアのワイナリー巡りに出かける―。
ワイナリーで試飲するシーンでは、グラスを傾けて色を見たり、空気に触れさせて香りを立てたり、はたまたそのワインのぶどうの品種に関してだったりと、マイルスがジャックに教える形を取りながら、観ている私たちにも同時にレクチャーしてくれるのが楽しい。いわゆるワインオタクで理屈っぽい語り口のマイルスと、芸能人らしくその時その時の感覚で言葉を紡ぐジャックは、一見どうしてこの2人が親友なんだろうと不思議に思うのだが、正にお互いに欠けている部分に惹かれるという典型例とも言えるだろう。実はジャックはこの旅を結婚前最後の女漁りの旅にしようとしていた。ただ同時に離婚以来元気のないマイルスに女をあてがおうと言う男らしい?気遣いも見せる。
女性から見れば「女を何だと思ってるの!」てなものだろうが、悪友同士というのはそんなものなのだ。ジャックは最初にレストランのウェイトレス・マヤ(ヴァージニア・マドセン)に目をつけるが、彼女は既にマイルスと顔見知りで、尚且つワイン通同士として仲が良かった。そこで彼はワイナリーで出逢ったステファニー(サンドラ・オー)をナンパすることに成功する。奇しくもステファニーとマヤは友達同士。これが後々大変な事態を引き起こすのだが、この時はそんなことは思いもしない。かくしてマイルスとマヤ、ジャックとステファニーという4人2組は時にWデートを楽しむことになる。それにしてもジャックのプレイボーイぶりがベタで実にユニークだ。
対してマイルスときたら!ステファニーの家で飲んでいる時など、とっとと2人でしけ込むジャックたちと対照的に一向煮え切らないマイルスの姿にイライラを通り越えて、マヤに対する哀れみさえ覚えてしまった。それにしてもヴァージニア・マドセンが見せるマイルスを誘うような仕草の一挙手一投足が実に上手い。じっと熱い眼差しで見つめてみたり、パーソナルな領域にかかる質問を投げかけてみたり。距離感を縮めようとしているのに、そこに飛び込んでいけないマイルスの戸惑い、それは彼の元妻ヴィクトリア(ジェシカ・ヘクト)に対する想いに他ならないのだがそれにしても情けない。いや、全くその気が無いなら何も問題はないのだ。内心では惹かれているのに行動を起こせないのは頂けない。
こんなことを続けていたらその内嫌われてしまうのではないか、そんな余計な心配すらしてしまうのだが、逆に言えばそのウジウジさ加減をその風貌も含めて丸ごと演じきったポール・ジアマッティの演技力が光る。演出的に極めつけなのが、彼がエロ本を見て悶々とした結果彼女に逢いに出かけるシーンだ。これまた女性には最低扱いされそうだし、実際マヤには後に「セックスが先だったわけね!」と言われてしまうのだが、男性の心理としては非常に良く解る。さて、ともあれマヤと決めて一挙に親しくなったマイルスだが、思いっきり口を滑らせジャックが結婚することを話してしまう。当然ながらマヤは激怒、そして話は友達のステファニーに…。かくしてジャックは鼻の骨をへし折られるハメに。
凹んだ中年男2人がお互いを慰めあう様子は観ていてややもすると滑稽に映る。しかし、学生時代からの親友だからこそ、お互いにお互いの無様な姿を曝け出すことも出来るのである。だから私はこの2人が羨ましくもあり、同時にとても親しみを抱いた。それだけに、結婚式以後、そんな大親友をいわば妻に奪われた格好のマイルスが、心にぽっかり穴が開いたようになる気持ちも解らなくはない。ステファニーの家で飲んだあの日、彼はマヤに「ピノ・ノワールは扱いが難しい、しかしうまく扱えば最高なものが生まれる」と語っていたが、私には無意識の内にピノと自分を重ねあわせた発言のように思える。ラストシーンは予定調和と言えばそうだが、きっとマヤは彼をうまく扱ってくれるに違いない。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:残念ながらワインが好きじゃない事実…
総合評価:72点
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