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2012年5月11日 (金)

断崖/Suspicion

Photo 英国の作家フランシス・アイリスの「犯行以前」が原作。サスペンスの神様アルフレッド・ヒッチコックの1941年の作品で、夫に対して“疑惑”の念に取り憑かれた妻を描いた心理スリラーだ。第14回アカデミー賞作品賞ノミネート作品であり、主演のジョーン・フォンテーンはこの時アカデミー賞主演女優賞を獲っている。共演にヒッチコック作品の常連ケーリー・グラント。
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70年前?全く古さを感じさせないミステリー

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流石に超一級の心理描写だった。邦題の「断崖」は作品の象徴的な情景を表しているが、原題の「Suspicion」は“疑惑”の意味で、文字通り主人公リナ(ジョーン・フォンテーン)の夫に対する疑惑のことだ。観ていて一番強く感じたのは、リナとその夫となるジョニー(ケーリー・グラント)のキャラクター設定がキッチリと確立されていることだった。とにかくいい加減でその場しのぎの嘘ばかりつくジョニーと良家のお嬢様育ちで芯が強いけれど、ジョニーに対してだけはどうしてもその強さを出せないリナ。こんな2人なのにお互いがお互いを愛する気持ちだけは終始一貫変わらない。もっともそれがあるからこそ物語を観てゆく上で、一体真実はどこにあるのかが解らなくなるのだ。

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オープニングの列車の中で2人は出会うも、初対面でいきなりリナに小銭を借りるジョニーからは何だかえらく軽薄な印象を受ける。更に町で再会した2人は束の間のデートを楽しむのだが、乗馬を嗜むリナとの間で交わされる「君の馬と比べて僕はどうだい?」「手綱があれば乗りこなせそうね。」なんて会話はリナの気位の高さと気の強さが見て取れた。ただ面白いのは、この後もジョニーが終始一貫変わらずいい加減なのに対して、リナはドンドン気弱になっていってしまうところだ。お金がないのにそれを全く言わずに結婚し、従兄弟の不動産管理会社の金を持ち逃げしてクビになり、リナの家に代々伝わる家宝の椅子を勝手に売り飛ばした金を元手に競馬をする。

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しかもそれがリナにばれる度に必ず嘘をついて誤魔化すのだ。それだけではなく、優しい言葉をかけ、プレゼントをし、自分がいかにリナを愛しているのかをアピールする。バレバレの嘘をつかれても、最初に書いた通りジョニーのリナに対する愛情だけはいつだって本物で、だからこそ彼女も疑っては信じ、そしてまた裏切られるを繰り返すハメになるのだ。また途中で登場する脇役たちがジョニーの言動を絶妙にアシストしてくる。彼の親友のビーキー(ナイジェル・ブルース)はやたらと“余計なこと”ばかり口にして、彼女の夫に対への疑惑を増幅させ、リナの友人でミステリー作家のイソベル(オリオール・リイ)はジョニーに殺人に使う毒薬について教え、彼女の不安を煽るのである。

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中盤までのお金にまつわる嘘と疑惑が幾重にも重なった結果、今度はそれがビーキー殺し、更には自分も殺されるのではないかと言う不安へと膨れ上がっていく流れは見事としか言いようがない。ジョーン・フォンテーンは本作でオスカー女優になったが、最初の快活で気が強いお嬢様っぷりが嘘のように精神的に追い込まれてゆく演技は見ものである。ある段階からと言う訳ではなく、99分間の尺の中で徐々に徐々に見ている側が気がつくと変わっているのだ。今時の安っぽいミステリーとは異なり、途中で先が見えることなど全くない。「どこにでも普通にある毒」の話の後に、ジョニーがリナのためにミルクを運んでくるシーン、それが答えなのかは解らないが自然と見入ってしまう。

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後から聞く所によると、このシーンのためにヒッチコックはミルクに豆電球を仕込み、ボーっと光らせてこれを印象付けたのだそうだ。もっとも個人的にはミルク自体が意外だったのでそれだけで注目してしまったけれど、全く持って驚きの発想だ。ところで原作ではこのミルクに毒が仕込まれていて、リナの不安は的中し毒殺されてしまうのだという。しかし本作の場合、一説によればケーリー・グラントの俳優イメージのためにそれはNGとなったのだとか。これには70年前も今もそうした大人の事情は大して変わらないものなのだとちょっと笑ってしまった。それでは一体どういうラストになったのか。これが本当に最後の最後ま全く解らない。そして謎が解けると潔くサッと物語は終わる。

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実はジョニーはずっと金策に奔走していたのだった。従兄弟から持ち逃げした金を工面しようとするのだが、ビーキーとともに興そうとした事業も上手く行かず、リナの保険金を担保に金を借りることも不調に終わっていた。そうした行動の断片だけがリナに伝わることで、彼女は彼がビーキーや自分を殺そうとしていたと思い込んだのである。もちろんそれ以前の嘘を重ねるジョージの人となりが伏線となっての話だ。行き詰ったジョージは自殺をするために毒薬についての知識を必要としたのだった。個人的にこのラストは想定の範囲内ではあったが、それでもこの瞬間のカタルシスは大きい。もっともヒッチコック自身はあまりこのラストを気に入っていなかったという話もあるが。結末そのものもだが、70年前のプロット自体が現代においても少しも古さを感じさせること無く観られるのに驚きを隠せなかった。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:ジョーン・フォンテーンが日本生まれだなんて!
総合評価:82点

作品情報
キャスト:ケイリー・グラント、ジョーン・フォンテイン、セドリック・ハードウィック、ナイジェル・ブルース、デイム・メイ・ウィッティ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:デビッド・O・セルズニック
原作:フランシス・アイルズ
撮影:ハリー・ストラドリング
音楽:フランツ・ワックスマン
美術:バン・ネスト・ポルグレイズ
原題:Suspicion
製作国:1941年アメリカ映画
上映時間:99分

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