アクネ ACNE/Acné
女性とのキスに憧れる思春期の少年を描いた青春ドラマだ。ウルグアイのとある町が舞台、少年はニキビ顔にコンプレックスを抱いているため、好きな女の子に告白できないでいる。主演はアレハンドロ・トカール。監督・脚本はフェデリコ・ベイロー。主人公の少年が友人から好きな女の子にかける言葉を仕入れるのが瑞々しくも懐かしい。 |
不安定な思春期の少年らしさが良く解る |
あらすじ
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ウルグアイ映画は初めてかもしれない。地球の裏側にあるウルグアイに住む13歳のユダヤ人の少年がキスに憧れるも、中々上手く行かないことで思い悩むという、思春期らしい物語である。そもそもウルグアイにユダヤ人が多く住みユダヤ人学校があるという事自体知らなかったので新鮮なのだが、それ以上に13歳にしてやることがませている主人公ラファエル(アレハンドロ・トカー)に驚いた。何しろ兄が自宅のメイドに話をつけ、弟ラファエルの筆おろしを頼むのだ。放課後に遊ぼうという友達の誘いを断ってどこに行くかと思いきや、誰もいない自宅に帰りメイドと初体験とは恐れ入る。もっとも後々判明するのだが、ユダヤ教では13歳になると成人の儀式が行われ大人として扱われるらしい。
だからなのか普通に喫煙もしている。ただ一番驚いたのはラファエルが娼館に娼婦を買いに行くことだ。それも大人たちに混じって順番待ちをしている姿はおかしいやら驚くやら。おまけにラファエルの父と娼館前で鉢合わせしそうになるのだから、一体この国ははどうなっているのだ!(苦笑)宗教や国によって様々な文化や考え方があるので、一概に否定は出来ない。ただこのラファエルの気持ち自体はその昔男子だった私にも良く解る。13歳ともなれば性に興味が尽きないお年頃、いわゆるやりたい盛りなのだから。しかも彼の家はお金持ちで、両親は彼が娼館に行けるぐらいのお金をぽんと小遣いとしてあげてしまうのだから、彼がそういう行動に走ったとしても至極当然と言えるだろう。
ただ実のところラファエルは単純にセックスをしたいだけではなかった。彼が一番望んでいたのは何と“キス”だったのだ。なるほどそう考えると急に彼が13歳の少年らしく思えてくる。要するに彼はセックスをすればキスも出来ると考えていた節がある。この辺日本人としては腑に落ちるところなのだが実際にはそうならないのが面白い。日本人的感覚だとキスよりもセックスのほうが重いものだが、彼らの感覚では例え娼婦と言えども口にキスはさせないのだ。曰く「キスは好きな人としなさい」と。ところが彼はそうは受け止めないのだった。何故かと言えば彼の顔にはたくさんのにきびがあり、それが気持ち悪くてキスをしてくれないのだと思い込んでいたから。
無論そんなワケは無いのだが、思春期のにきびの悩みはラファエルほど酷くなくても多くの人が経験があるのではないだろうか。やたらませているかと思えばやけに少年ぽい悩みを抱えていたりと、この辺のアンバランスさが思春期の少年らしくていい。この後ラファエルの両親は離婚して、彼らは父と一緒に住むことになる。しかしどうしてラファエルはそこまでキスに拘るのか。これがまた単純でクラスメイトでブロンドの髪が美しいニコル(ベレン・ポウチャン)のことを好きだからだ。実際この役を演じたベレンは相当な美少女だが、詳細が解らない…。映画そのものは4年前の作品なので実年齢に近いならば今も16~7歳だとは思うのだが
授業中もニコルをチラチラ観ているラファエル、そんな彼女を思い出しながら自分の二の腕に口付けするラファエル(彼女の唇を妄想していたのだろう)、悶々として悩み続けるラファエル…。そこには恋する少年の姿が実に瑞々しく描かれていた。友達からニコルを誘うセリフをアドバイスされ手帳にメモる姿を観ているとかれの純粋な気持ちがよく伝わってくる。ところがこの時期の女の子は間違いなく男の子より大人なのだ。それはラファエルが既に童貞を卒業していて彼女が処女だったとしても。やっとの思いでパーティーの席でダンスに誘い踊る姿からはまるで心臓の高鳴りが聞こえてきそうだ。でもニコルの方はと言えばいたって平静、というより仕方なく付き合ってあげている風ですらある。
客観的に観ていると彼女がラファエルに何の興味も抱いていないことは良くわかるのだが、果たして彼は彼女に告白し見事に撃沈するのだった。上級生についていってしまう彼女を見つめるラファエルを見ていると、思わず「元気出せよ」と声を掛けたくなってしまうほどだ。しかし男女の関係は不思議なもので、ラファエルは父親の会社の近くにある雑貨屋の女性と親しくなる。みたところ明らかにお姉さんなのだが、彼は彼女によってファーストキスを体験するのだ。別にそれ自体は大したことではないし、お話そのものもだから感動するという類のものでもない。しかし、思わず「やった!」とも思ってしまうカタルシスがあるのが不思議だ。多分男性はこの気持ちに共感しやすいのではないか。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:羨ましいようなそうでもないような…
総合評価:67点
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