ブレーキ/Brake
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理不尽さよりエンタメ性? |
あらすじ
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これはもう完全に『リミット』からのパクリネタというか派生ネタだ。ただ作品としてはこちらの方が工夫されている点が多くて面白いと思う。何が違うのだろう。『リミット』は理由もなく箱に閉じ込められるという理不尽さの中で、何とか脱出しようと恐怖と戦いながらもがく主人公を描いたものだった。対して本作では主人公ジェレミー(スティーブン・ドーフ)が襲われる理由がちゃんと存在する。そのためだろうか、他人が恐怖する気持ちに同化しながらその緊迫感を愉しむ『リミット』に比べて、本作ではむしろジェレミーを応援しつつ、この後どうなるのだろうかという部分に興味が向くのだ。要はアクションヒーローが監禁状態から脱出する姿だけで1本の作品を作ってしまったようだ。
ジェレミーが閉じ込められたのは車のトランクルーム。ただしその中にかなり分厚いプラスチックの棺おけ状の箱をがあり、その中に彼は入れられていた。映画の解説サイトではデジタル時計に刻まれる4分の数字が0になるごとに死の罠に襲われると書いてあったりするが、実際には4分でない場合もあったりした(苦笑)この辺の設定の曖昧さが惜しい所で、そこを割り切るなら割り切った方が良かったのではないだろうか。4分毎に何かが起こるという定時的な気持ちの盛り上がりを設定しておきながら活かさないのはもったいない。更に言うと死の罠というにはヌルイ罠だったりもする。これにはちゃんと理由があって、それが本作が完全閉鎖的なシチュエーション・スリラーとは少し違う所以だ。
即ち、ジェレミーを閉じ込めた犯人にとって彼は死んでもらっては困るのである。箱の中には無線機が置いてあり、ジェレミーは外部の人間と連絡を取ることが出来るのだが、まず最初に国務省の職員だという人間と話をすることになる。物語が進むにつれて携帯電話までゲットすることになるが、外部との話の展開でジェレミーが大統領警護官であり、緊急事態時における大統領の避難場所“ルーレット”の場所を知る人物であることが明らかになってくるのだった。そう、犯人は大統領暗殺のために彼を捕虜にしたと言う訳である。それが解った時点で彼を単なる死を待つ被害者という目線では見られなくなり、今度は彼がいかにして脱出をするのかと言うポジティブな目線に変わってくる。
そもそも無線もあれば携帯電話もある。他の無線でトラックの運転手と連絡をとり、携帯で恋人や同僚、警察とも連絡をとれる。しかもご丁寧に車のラジオまで聞けてしまうと来ては、確かに肉体こそ監禁状態だが情報に監視は割と自由と言えるだろう。この自由度の高さが、脱出という希望に対する期待感を高める効果があるのだ。ただし、終盤に来て真相が明らかになるにつれて、情報の自由度の高さがある故に肉体の自由度がない歯がゆさに直面することになるというのは中々上手い脚本だと思う。かくして彼は同僚が国中で起こっているテロの犯人一味であり、妻もまた敵の手に落ちてしまったことを知るのだが、話はここでは終わらない。この終盤の大どんでん返しの連続は本作の見所である。
“ルーレット”の場所を白状しないと殺すと脅され、実際に箱の中に液体爆弾を注がれて窒息死する寸前、突然トランクが開きジェレミーは助け出される。するとそこには裏切り者の同僚の姿が…。何とこの一連の監禁はジェレミーが昇進するための資格があるかどうかのテストだったのだ。全ては仕組まれた茶番だったということになる。
が、多分観ている人はみな何か釈然としない居心地の悪さのようなものを感じるだろう。私も「このまま終わりならつまらない作品だな…」と思ったところでやはり最後にもう一山あった。個人的にはこのラストのどんでん返しがやや足早に詰め込みすぎに感じたので、もう少し時間を取っても良かったのではないかと思う。
要は観ている側が疑念に囚われて心の中であれこれ考える時間が欲しいのだ。とはいえ、本作は通り一遍なシチュエーション・スリラーではなく、そこにまるで『24』のようなエンタテインメント性が加わったことで、観ていて変な陰気さや不快感、理不尽さがグッと陰を潜めているという意味で、一般的に観やすい作品に仕上がっていたと言えるだろう。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:もうちょっと罠が厳しくても良かったかなぁ
総合評価:64点
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