図書館戦争 革命のつばさ
表現の自由を巡る政府機関と図書館との熾烈な戦いを描いた有川浩のベストセラー小説をTVアニメ化した「図書館戦争」の劇場版。図書隊に加入したヒロインがある作家をメディア良化隊から守り亡命させようと奮闘する姿や、先輩隊員との甘酸っぱいラブストーリーを描いている。声優は井上麻里奈、前野智昭らのほか一世ー尾形も参加している。監督はTVシリーズと同じ浜名孝行。 |
直球ど真ん中のテーマ性に好感 |
あらすじ
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実はTVシリーズは未見。それどころかこの映画で初めて作品の存在を知ったのだが、Production I.G制作のアニメーションだということ、そして原作が『阪急電車』の有川浩だということで俄然興味を惹かれての鑑賞だ。物語の世界観は実にユニーク。2039年、「メディア良化法」が施行された世界では、「メディア良化委員会」の実行組織「良化特務機関(メディア良化隊)」による苛烈な検閲が認められていた。何しろそのためには武力の行使すら許されるというのだから驚きである。更にユニークなのは、そのメディア良化委員会に対抗できる組織は唯一つ「図書館」だということだ。図書館法に基づき、図書館側は自衛のために図書隊という防衛組織を設立する。
ここには2つの大きな皮肉が込められていると思う。1つは「表現の自由」、「言論の自由」を巡る争いに武力という暴力が持ち込まれている点。そしてもう1つは、だからといって国を二分しての大混乱になっているわけでもなく、その争い自体に全く興味を持たない大多数の国民が存在するという点だ。これは重要なことで、本作ではこの2点を一体どうやって解決するのかというのがテーマと言って良いだろう。具体的には当麻蔵人(イッセー尾形)という作家が書いた小説を真似したと見られる事件が発生したことで、当麻を逮捕しようとする良化隊と彼を守り亡命させようとする図書隊の間の攻防を、ヒロイン笠原郁(井上麻里奈)やその上官・堂上篤(前野智昭)を中心として描いている。
TVシリーズ未見、或いは原作未読だと、最初は図書隊内での人間関係に若干の戸惑いを覚えるかもしれない。また、メディア良化隊と図書隊の争いの歴史を知らないために、登場人物たちの内に積み重なった“守るべきものへの想いの強さ”というものが自分の中で上手く落ち着かないような感覚を覚えたりもした。それが故にいま一つ物語にはまり込めなかったりしたのだが、ヒロイン笠原の熱血キャラと天然ボケの可愛らしさにいつしか惹きこまれていくのが不思議だ。さしずめツンデレならぬネツデレとでもいうのだろうか(笑)それにしても派手なドンパチやらカーチェイスの様子を観ていると、一介の小説家を守るというよりは政治思想犯を守っているようにすら見える。
東京のアメリカ大使館やイギリス大使館に逃げ込むのに失敗した笠原たちはメディア良化隊の襲撃で堂上が負傷してしまう。仕方なく笠原はたった一人で当麻を警護しながら大阪の総領事館へ駆け込むことに決め、一路中央道をひた走るのだった。車中では彼女が堂上の事を好きになるきっかけであったり、当麻がこれまで「表現の自由」や「言論の自由」を守ることに対して何もしてこなかった悔恨の情が描かれる。ヒロインの恋物語と作品のテーマそのもののエピソードが同時に上手く語られていく様子は客観的に見ると不思議なのだが、笠原と当麻の打ち解けた会話として綺麗に成立しているのが上手い。結局の所、恋も表現の自由も与えられるものではなく自ら勝ち取るものなのだ。
自分には関係ない、自分が無事ならそれでいい、そういった自分中心の無関心こそが権力を持つものにとって最も都合のいい存在なのは言うまでもない。SFアニメーションという娯楽作品でありながら本作はそのあたりを直球で訴えているのが好感が持てた。それにしてもこの作品、実写映画化してもそれなりに面白いものが出来そうなのだがどうだろう。さしあたり小説を読んでみたくなった。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:イッセー尾形の声優は…(苦笑)
総合評価:66点
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