東京無印女子物語
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本当になんでもない話 |
あらすじ
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ねむようこや山崎童々といった若手漫画家が競作した短編集を実写映画化した作品だ。当然ながらオヤジとしてはそれら漫画家の名前すら聞いた事がないのだが、主演が谷村美月と聞いては観ない訳にはいかない。作品は短編集の実写化らしく、プロローグとエピローグを除くと2つのエピソードに分かれている。そしてエピソード1は谷村美月扮する坂下のぞみが、エピソード2は柳めぐみ扮する間宮冴子と趣里扮する大館カオリという合計3人の女子の日常が描かれていた。どちらのエピソードも、ややもすると眠くなってしまいそうなほど淡々とした起伏のなさが特徴で、それはまるで揺らぎのない水面のようですらある。ところが、そんな水面に小石を投げ込むような出来事が起こる。
とはいっても、決して大波を立てるような出来事ではなく、あくまでも静かに波紋が広がっていくといったレベルでの事件だ。のぞみは田舎から上京してきた女子大生。ただ田舎の高校に居た時からあだ名がのろまの“ノロ”といわれるほどで、都会に流れる時間と自分の中に流れる時間の早さのギャップに違和感を覚えていた。これは恐らく田舎から上京してきた人間なら誰しも一度は経験するのではないか。そんな中でたまたま彼女と同じ時間の流れを持つ青年・亀山壮太(大和田健介)と同棲を始める。個人的に不思議なのが、都会の時間の流れに違和感を覚えるような田舎の少女でも同棲は普通にするんだということ。自らの学生時代に照らし合わせると中々考えにくいのは年を取った証か…(苦笑)
興味深かったのは、のぞみが同窓会に出席した時のことだ。高校時代の同級生が上京してくるのだが、のぞみと彼女の高校時代の憧れの男子・早瀬むねのり(落合モトキ)だけは東京在住である。高校時代にはその生きる速度の違いから相手にもされなかったのに、今は同じ東京の人間として妙に仲間意識が芽生えている。ただ、仲間意識と生きる速度は別の問題だ。最初は憧れのトモヤと対等に話せていることに喜びを感じていたのぞみが、やがてそのズレを実感するあたり、この辺の微妙な心理の描き方がとても上手い。家に帰ると壮太がそこにはいて、彼女はやっぱり彼の存在に落ち着く。恋愛というには少し違うかもしれないが、もしかしたら生涯の伴侶としてはこういう点が大切なのかもしれない。
間宮冴子は広告代理店に勤めるバリバリのキャリアウーマン。家にも仕事を持ち込み仕事命の女性だ。そんな彼女がルームシェアしている大館カオリは冴子と正反対のアバウトさ。フリーターをしながら誰とでも仲良くなって毎日を楽しんでいる。ちなみにカオリ役の趣里は「金八先生」で見ていたが、改めて観るとお母さんの伊藤蘭にソックリだ。ついでに言うと父親は水谷豊である。このエピソード2は2人の対象的な女子に起こる対照的な出来事を映し出していた。冴子は忙し過ぎて彼氏の船橋トモヤ(川野直輝)ともすれ違いが多い。2人が付き合い始めて1年の記念日、夜に食事の約束をするもののトモヤは仕事で急に来れなくなるのだった。何ともベタな話ではある。
しかも会社の若い女性の後輩がカオリからの電話に出てしまったりと、傍から見ると破局に向かって一直線のようにも見える。たまには女子らしいことをと一生懸命ケーキを作る冴子の姿、こんな姿に男は漏れなく弱い。一方カオリはといえばラブラブの彼氏とデートに出かけるのだから、明暗はくっきりだった。こんな時の女性の気持ちは私にはちょっと解らないが、心の傷にむりやり仕事というクスリを塗りこむそのの姿には同情を禁じえない。ところが、トモヤは遅ればせながらやってくる。何のことは無い、別に彼に浮気の気持ちなどなく、悶々とした気持ちになっていた冴子と見ている私たちの取り越し苦労だったというわけだ。ところがカオリの方に事件が持ち上がる。
実はカオリの彼は妻子もちだったのだ…。冴子の生き方に対する憧れを口にするカオリ。生き方の違いが恋人との明暗を分けたわけではないと思うが、カオリの哀しい気持ちとしてはそこに想いを持っていかなくてはやりきれないのは解る。エピソード2はたったこれだけのお話だ。本当に他愛もない、どこかで聞いたような話でしかないのだが、しかしだからこその説得力。結局ラストの先を見据える3人の女性の表情をみていると、若い彼女たちにはまだまだ先があるというポジティブな希望が感じられた。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:谷村美月写真集「FAKE」好評発売中w
総合評価:62点
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