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2012年6月15日 (金)

隣る人

Photo 児童養護施設「光の子どもの家」の日常を8年間に渡って追いかけたドキュメンタリー。何らかの理由で親と暮らせない子どもたち、その子どもたちに寄り添う保育士、そして再び子どもと暮らそうと葛藤する親、そんな姿を丁寧に映し出している。監督はフリージャーナリスト集団「アジアプレス・インターナショナル」所属の刀川和也。
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きっと彼女たちも隣る人になってくれるハズ

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上映終了後に刀川和也監督とお話をする機会が得られたのは僥倖だった。たった今観て感じたこと、疑問に思ったことなどをお聞きすると、私のような通りすがりの一映画ファンにも懇切丁寧に話してくれる。決して押し付けがましいワケでもなく、静かに話される語り口調からも刀川監督がとても優しく、しかし確たる信念をお持ちなのが伝わってきた。そう、本作はそんな刀川監督のお人柄がそのまま出たような作品だったと思う。本作は児童養護施設「光の子どもの家」に何と8年間に渡り密着し、そこで暮らす子どもたちと、その子どもたちに隣り合う保育士さん、そして何とか子どもたちとの関係を取り戻そうともがく親の姿を映し出していた。“絆”が叫ばれて久しいけれど、そもそも“絆”って何なのだろうと改めて考えさせられる―。

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この作品、ナレーションを含めて一切の説明がない。だから観始めた当初はすこし戸惑うだろう。「光の子どもの家」ってなに?この子どもたちはどうしてここにいるの?子どもたちの面倒を見ている女性たちはどんな人?きっとこんなことが頭に浮かぶはずだ。しかし監督はこう話してくれた。「説明してしまうとそこからこぼれてしまうものがあると思うんです。」と。観ているうちに段々状況が飲み込めてくる。でももしかしたら勘違いをしてしまうかもしれない。例えば本作で特にフィーチャーされている保育士のマリコさんは独身だそうだが、私は勝手にご家庭があるものだと思い込んでいた。何故なら彼女が面倒を見ているムツミとマリナの2人がまるで本当の母親のように懐いていたから。きっと子育ての経験があるのだろうと思ったのだ。

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しかし、そんな勘違いは大した問題ではないことにも気付く。監督が映し出したかったのはマリコさんという一人の人間と、ムツミとマリナという少女2人が互いにどのように向き合っているかなのだと思う。色々なことを考えさせられながら作品を観ていたのだが、特に心に残った3つのシーンがあった。一つは同じ「光の子どもの家」にいるマイカが担当の保育士マキノさんと別れるシーンだ。配置換えで別の施設に行くことになったマキノさんと別れる時、「ママー!」と絶叫して泣き叫ぶマイカ。実は後で監督に聞くと、ご結婚されて別の施設に異動したとのこと。もちろんこの仕事は続けていて今でも時々は会っているのだそうだが、その時のマイカにはそんなことは解らない。マイカの絶叫に胸が苦しくなると同時に、そこまでの関係を“絆”を結んだマキノさんの存在に想いが馳せる。

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マキノさんはどれだけの愛情をマイカに注ぎ、マイカはそれによってどれだけ大切なものを得たのだろうか…。彼女をがっちりと抱えて離さないマイカ、本作では子どもたちと保育士さんたちが抱きしめ合う姿がとても多く見られるのだが、その全てから溢れんばかりの愛情が感じられる。言葉はなくとも抱きしめる大人の愛を子供たちは全力で受け止めている。そこにあるのは私たちが子供の頃に親から注がれたのと同じものだ。もう一つ心に残ったのはマリコさんがお休みを取った日のムツミとマリナの様子だ。大好きなマリナさんがいない。少々意外ではあるが2人とも実は自分たちの置かれた状況をきちんと理解しているし、それ故にマリコさんがお休みを取っていることも理解している。しかしムツミがノートに書きなぐる「大好き マリコさん」の文字にムツミの想いを強く感じる。

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そして主のいないマリコさんの布団に2人は突っ伏し「いいにおい~」と嬉しそうな笑顔を浮かべるのだ。愛する人の残り香は子どもにとってどれだけ心安らぐものか、これも私たちは経験して知っているはずである。彼女たちとマリコさんの“絆”の太さが肉親同様であることの証だろう。マリコさんの匂いに包まれた2人の寝顔を観ていると言葉が無い。そして3つ目はムツミが一時帰省するシーンだ。それまでもムツミの母親は彼女に会いに来るのだが、これがどうにもぎこちない。両方ともお互いにどう接したら良いのか解らないようだ。ここでマリコさんが言っていた言葉が印象深い。要約すると、子どもたちを相手に苛立ちを覚えたり頭に来たりすることがあっても、ほんの少しの心からの可愛らしさがあれば、幸せがもらえれば全ての苦労が報われるというのだ。

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離れて生活している母親はそのほんの少しを得られない。結果として増々子どもとの関係を構築できなくなってしまうのである。ただ、マリナと違って現実的にムツミの母親はそこにいる。親はどこまで行っても親だし、子どもはどこまで行っても子どもなのだ、慌てることはないし、ゆっくりとゆっくりと関係を作っていけば良いのではないだろうか。監督と共にいらっしゃった、劇中にも登場する「光の子どもの家」の現在は理事長を務める菅原さんのお話によると、今ムツミは中学生になっていて、立派に?反抗期も迎えているそうだ。そしてマリコさんも劇中と変わらず今も子どもたちに愛情を注いでいるという。マリコさんがムツミたちに隣る人であったように、その愛情を一心に受けた彼女たちは、いつかは自分の子どもたちに隣る人になってくれるに違いない。

個人的おススメ度4.5
今日の一言:監督がいて当たり前の存在になっているのが凄いです
総合評価:85点

作品情報
監督:刀川和也
企画:稲塚由美子
プロデューサー:野中章弘、大澤一生
撮影 :刀川和也、小野さやか、大澤一生
編集:辻井潔
製作年:2011年
製作国:日本
配給:アジアプレス・インターナショナル
上映時間:85分

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東中野においでやす~。 隣る人 ホームページ 解説:2011年10月時点で、全国でおよそ3万人の子どもたちが預けられている児童養護施設の一つ「光の子どもの家」の日々の生活を、8年にわたり追い続けたドキュメンタリー。何らかの理由で親と生活を送れず、施設で過ごす子どもたちをめぐる何げない日常を丁寧に描き出す。今回初メガホンを取るのは、フリージャーナリスト集団「アジアプレス・インターナショナル」所属の刀川和也。必死に自分の存在を訴えかける子どもたちや親の苦悩などを見つめる過程に心打たれる。あ... [続きを読む]

受信: 2012年6月18日 (月) 17時40分

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