« 星の旅人たち/The Way | トップページ | アクネ ACNE/Acné »

2012年6月 7日 (木)

11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち

1125 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』、『キャタピラー』の若松孝二監督最新作は、1970年11月25日に防衛庁内で割腹自殺を遂げた三島由紀夫と「盾の会」に参加した若者たちを描いたドラマだ。三島由紀夫役を『空気人形』の井浦新が熱演する。共演には『キャタピラー』の寺島しのぶ、『極道めし』の永岡佑らが出演。
>>公式サイト

思想関係なし、近代史モノとして面白い

book あらすじ book

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへみなさんの応援クリックに感謝デスsunshine

01

相変わらず若松孝二という監督はやりたいことを好きなようにやる監督だ。これだけ好き勝手やりながらも映画を作り続けられるのだから流石である。もっとも今回の舞台挨拶でも例によって「映画がヒットしないと次の映画が作れないから観て!」とアピールしていたらしいが、これは『キャタピラー』の時も言っていた(笑)さて、日本では数少ない個性派監督が今回テーマにしたのは三島由紀夫だ。それも「盾の会」創設から自衛隊の市ヶ谷駐屯地で割腹自殺するまでを描いている。個人的に三島由紀夫の文学には全く興味はなく書籍も一冊も読んでいない。ただ彼が割腹自殺を遂げた年に生まれた身としては、何か歴史の節目的な繋がりを感じる。ま、端的に言えばそれしか知識がないということだが。

02

03

三島由紀夫を演じたのは井浦新、急芸名ARATAだ。エンドロールで歴代の三島由紀夫を演じた俳優の名前が出るのにアルファベットはおかしいという理由で改名したという拘りようで、実際に見事な成り切りぶりだったと思う。まあ強いて言うなら筋肉ムキムキだった三島由紀夫に比べて井浦はどちらかと言えばヒョロッとした感じだったし、また太い眉毛に骨太な顔つきが、井浦になると割とアッサリとした造作になっているため、強烈な個性や意志の強さがやや弱くなっていたように感じる。序盤から中盤にかけては「盾の会」結成までの道のりが描かれていた。日本学生同盟の持丸博(渋川清彦)らが三島の元に集い、後に三島と共に自殺する森田必勝(満島真之介)も合流する。

04

05

近代史的興味としては非常に面白く観ていたが、森田が日学同を代表して義理で参加していたはずがいつの間にか三島に心酔してしまうその過程をもう少し見たかった。何しろ唯一三島と道を共にする、というより観ている限りではギリギリの線で悩んでいた三島を最終的に決起に走らせたのは彼なのだ。ソコまでの繋がりになるためにはそれ相応の理由があるだろうと思うのだ。森田必勝役の満島真之介はあの満島ひかりの弟。本作が映画デビュー作だが、あの姉にしてこの弟あり。まるで狂気に取り付かれたかのごとく一途に三島に心酔する憂国の烈士の姿は時として井浦を超えていた時すらあった。「盾の会」は憲法を改正し、自衛隊を国軍として認めさせるべく活動を始める。

06

07

観ていて印象に残ったのは三島が自衛隊に体験入隊したシークエンスと、東大全共闘との討論会のシークエンスだ。体験入隊の際には自分を作家・三島由紀夫としてではなく、平岡公威として扱って欲しいと言いながらも指示もないのに勝手に走りに行ってしまったり、訓練後は上官たちを接待してみたり、結局は大作家でインテリである自分から抜け出せていない姿が見受けられて違和感を覚える。(無論実際にこの通りだったのかは解らない。あくまでも映画から感じたことだ。)東大全共闘との討論は実際に映像が残っているが、これも観ている限り学生に論破されて苦しい展開。もっとも神は天才的な文章力を与えた代わりに、弁論の能力は与えなかったのかも知れないが。

<三島由紀夫vs東大全共闘>

10・21国際反戦デー闘争が警察によって鎮圧されたことで、三島は自衛隊が治安出動し、それをもって憲法改正→自衛隊の国軍化の流れを実現することがもはや不可能になったことを悟る。かくして三島たちは「盾の会」単独でクーデターを起こし、自衛隊を巻き込んでその目的を達成しようという方向に舵を切ることになるのだった。専門的なことは私には解らないが、自衛隊を国軍化して左翼勢力から日本を守ろうとする思想はこの当時であったとしても世間一般に広く理解されたとは思えない。三島や森田、古賀たち5人は白塗りのコロナに乗って市ヶ谷駐屯地に向かうのだが、小さな車内に制服姿の5人が納まる姿は実に窮屈そうで、まるで孤立した彼らの存在そのもののように見える。

08

09

そして総監室で東部方面総監を人質にとり、集められた自衛官を前にして有名な三島の演説が始まる。三島が再三「静聴しろ!」と怒鳴っているにも関わらず、まるで誰も聞いていないかのようなあの状況にはさすがに哀れを催した。これでは完全にピエロだ。あおり気味に撮られた映像は本当の映像と同様で、演じている井浦の熱演が光る。ただ言っていること自体はもはや演説になっていないと感じた。切腹シーンは井浦乾坤一擲の芝居だった。震える表情、今にも目が飛び出さんばかりの力の入り具合は、切腹とはこういうものなのかと思わせるほどだ。世の中の全てに受け入れられなくても己の信念に準じて文字通り命まで賭ける、それが良いとか悪いとかは私には言えない。

<演説映像>

<演説音声>

また、人によっては狂人が一人馬鹿なことして腹かっさばいたとしか受け止められないかもしれないし、或いは神格化して語られるのかもしれない。ただ、日本を憂えるこんな人もいたのだということは心に刻み付けておくべきだと思う。ところで若松孝二監督と言えば強烈な反戦意識を持っている監督だ。その人がともすれば戦争すら肯定しかねない自衛隊の国軍化を夢見た三島を映像化するのはどうしてだろう。と思ったらインタビューでは連合赤軍で左を撮ったから右も撮らなきゃと冗談めかして語っておられた。三島が切腹に到るまでの過程の真実、そこに迫りたかったという監督の考えにはとても共感できる。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:次は731部隊を撮りたいのだそうな
総合評価:75点

作品情報
キャスト:井浦新、満島真之介、岩間天嗣、永岡佑、鈴之助、渋川清彦、大西信満、地曵豪、タモト清嵐、中泉英雄、橋本一郎、平野勇樹、鈴木信二、落合モトキ、粕谷佳五、磯部泰宏、小橋和之、水上竜士、安藤岳史、辻本一樹、山岡一、増田俊樹、よこはまよしひろ、中沢青六、岡部尚、安部智凛、寺井文孝、藤井由紀、長谷川公彦、韓英恵、小林優斗、小林三四郎、笠松伴助、小倉一郎、篠原勝之、吉澤健、寺島しのぶ
監督:若松孝二
企画協力:鈴木邦男
プロデューサー:尾崎宗子
脚本:掛川正幸、若松孝二
音楽:板橋文夫
撮影:辻智彦、満若勇咲
照明:大久保礼司
録音:宋晋瑞
編集:坂本久美子
衣装:宮本まさ江
製作国:2011年日本映画
配給:若松プロダクション、スコーレ
上映時間:119分

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪

|

« 星の旅人たち/The Way | トップページ | アクネ ACNE/Acné »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/197507/45558041

この記事へのトラックバック一覧です: 11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち:

» 11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。若松孝二監督、井浦新(ARATA)、満島真之介、タモト清嵐、岩間天嗣、永岡佑、鈴之助、渋川清彦、大西信満、地曵豪、中沢青六、韓英恵、小倉一郎、篠原勝之、寺島しの ... [続きを読む]

受信: 2012年6月 7日 (木) 00時09分

» 『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 [こねたみっくす]
1970年11月25日、三島由紀夫はなぜ割腹自殺を選んだのか。 個人的に昭和史最大の謎である作家・三島由紀夫の自衛隊・市ヶ谷駐屯地での演説後の割腹自殺事件。作家は文章でこそ志を訴 ... [続きを読む]

受信: 2012年6月 7日 (木) 20時52分

» 11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち [ゴリラも寄り道]
<<ストーリー>> 「金閣寺」「憂国」などの傑作、話題作を放ち、文豪として世界からも 高い評価を得ていた三島由紀夫(井浦新)。学生運動が全盛を極めている中、 彼は民族派の若者たちを集めて民兵組...... [続きを読む]

受信: 2012年6月 9日 (土) 03時07分

» 井浦新インタビュー:映画「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」について【1/4】 [INTRO]
先日閉幕となったカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映され、話題を呼んだ若松孝二監督の新作『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』。本作で三島由紀夫役を演じ、新しい解釈の三島像を打ち出した井浦新さんにお話を伺った。【page1/4】... [続きを読む]

受信: 2012年6月 9日 (土) 14時10分

» 11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち [ダイターンクラッシュ!!]
2012年6月3日(日) 16:00~ ヒューマントラストシネマ有楽町2 料金:1000円(Club-C会員料金) 『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』公式サイト 過激派のシンパで極左の親爺だと信じて疑わなかった若松孝二。右翼の大将の映画を撮るというので、どんな差別した描き方するのかとするのかと思いきや、普通に描いていた。 若松孝二が新左翼を題材にしたのは、面白かったからだそうだ。連合赤軍の映画では、元過激派がチケット買ってくれないと怒っているし。 そして、三島先生のゲイ的描写は無し。サ... [続きを読む]

受信: 2012年6月11日 (月) 01時51分

» 11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評]
''文豪・三島由紀夫の衝撃的な自決とそれに至るまでを描く「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」。三島よりも時代にフォーカスしている。1960年代、三島由紀夫は「仮面の告 ... [続きを読む]

受信: 2012年6月12日 (火) 09時32分

» 映画「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」その日に至るまでの軌跡を見る [soramove]
「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」★★★☆ 井浦新(ARATA)、満島真之介、 タモト清嵐、岩間天嗣、永岡佑、 鈴之助、渋川清彦出演 若松孝二監督、 119分、2012年6月2日公開 2011,日本,若松プロダクション、スコーレ株式会社 (原題/原作:11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち ) 人気ブログランキングへ">>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知り... [続きを読む]

受信: 2012年6月13日 (水) 21時46分

» 11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち [映画とライトノベルな日常自販機]
★★★三島由紀夫が若者たちと結成した楯の会は、非戦の憲法の改正、再び天皇を神とし、天皇の軍隊による治安維持などを掲げ、自衛隊は日本の軍隊であり有事の際には自衛隊とともに敵なるものと戦うとしていました。 日本の文化は武士道であり、美しく死ぬことこそ生きる目的であるとしていました。そのためには精神が健全であることが必要で、さらに健全な精神は健全な肉体があってこそなのだと三島は言います。 楯の会のメンバーが自衛隊で訓練にあたるのは、軍事行動を身に付けるだけではなく、健全な肉体を作るためなのでしょう。 三島... [続きを読む]

受信: 2012年6月13日 (水) 22時29分

» 11.25自決の日 [映画的・絵画的・音楽的]
 『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を渋谷のユーロスペースで見てきました。 (1)若松孝二監督の作品は、以前は余り見なかったものの、このところ『実録・連合赤軍』、『キャタピラー』そして『海燕ホテル・ブルー』とお付き合いしてきましたので、この作品もと思...... [続きを読む]

受信: 2012年6月14日 (木) 04時40分

» 「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」 [みんなシネマいいのに!]
 1970年11月25日に防衛庁内で割腹自決を遂げ た三島由紀夫と、彼と行動をと [続きを読む]

受信: 2012年6月20日 (水) 05時23分

» 「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」:似てない・・・ [大江戸時夫の東京温度]
映画『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』は、国粋主義者ミシマを描きながら [続きを読む]

受信: 2012年6月21日 (木) 22時28分

« 星の旅人たち/The Way | トップページ | アクネ ACNE/Acné »