シグナル~月曜日のルカ~
三根梓の不思議な雰囲気がイイ |
あらすじ
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どこかミステリアスな青春ラブストーリーだった。そもそも舞台となっている田舎の名画座・銀映館自体がとても古くて不思議な佇まいである。しかもヒロインのルカ(三根梓 )はまだ若い女性なのにも拘らずこの銀映館の映写技師で、3年もの間1度もそこから外に出たことが無い。そんな彼女の元に学費を稼ぐためにひと夏のバイトとして現れたのが大学生の宮瀬恵介(西島隆弘)だった。彼は高額のバイト料の条件に“3つの約束”「ルカと恋愛してはいけない」「月曜日はルカが酷く落ち込むがそっとしておく」「ルカの過去を詮索しない」をさせられる。という訳で、物語前半ではルカに関しては最低限の情報しかないのだが、それが余計に物語の不思議さを増幅させてくれる。
代わりにといっては何だが、そこで描かれる映写技師の仕事や、古い映画を上映するシーンは映画ファンにはとても嬉しいところだ。今やデジタル上映にどんどんと取って代わられる中、古い映写機にフィルムをセッティングする様子や、フィルム同士を繋げる方法、2台の映写機を自動的に切り替えるための方法や、果てはレンズのピントを合わせる方法まで教えてくれる。もちろんそれはルカが恵介に教えているのだが、登場人物の瞳の光にピントを合わせるなんて話は中々聞く機会が無い。古き良き映画と映画館のもつ不思議な魅力はノスタルジックな気持ちとともに、ルカへの興味をイヤでも湧き起こしてくれる。実はこの興味は演じている三根梓による部分も大きい。
本作で映画デビューを果たした彼女は知名度など全く無い。しかし端正な顔立ちと綺麗な瞳からはどこかミステリアスな雰囲気を漂わせ、その落ち着いた演技は新人とは思えないほどだ。セリフが極端に少ないということも影響はしているだろうし、相手となる西島隆弘の助けも当然あるけれど、先が楽しみな若手女優だと思う。ところでその西島くん、『愛のむきだし』で見せてくれた高い演技力は健在で、恵介はやたらとクサイ台詞が多いのだけれど、彼が演じると極自然で爽やかに無理なく馴染んでしまうと言うのが素晴らしい。彼のもつイヤミのなさは例えば三浦春馬だとか、岡田将生に通じるものがある。さて、ある日銀映館に若い女性バイトが雇われてからルカのことが徐々に明らかになっていく。
ただ彼女の秘密を少しずつ解らせるのではなく、そのバイトの女の子に一気に語らせてしまう演出はちともったいない気がした。もっともそれは全てが真実ではないのだが。要するにこの町にはウルシダレイジ(高良健吾)というイケメンの金持ちがいて、町の女の子の羨望の的だったらしい。そのレイジは7人の子と同時に付き合っていたのだが、そのうちの一人がルカだったのだ。彼女は月曜日しか彼に会うことが出来ないことから“月曜日のルカ”と呼ばれるようになる。ところが7人のうちの一人がレイジの子を妊娠し自殺に追い込まれてしまったことで、ルカは彼から距離を置こうとするのだった。全く二股でボコボコに叩かれる俳優が現実に居るのに七股とは恐れ入る(苦笑)
ただ彼から逃れるためなら別に銀映館に引き篭もらなくても日本中どこへなりども逃げれば良い訳で、実はまだ彼女には隠された秘密があるのだった。それは物語のラストで明らかになるのだが、そこに至るまでにレイジとルカ、そして恵介を交えた三つ巴の恋のバトルが展開される。ただいわゆる青春ラブストーリーのような展開ではない。何しろこのレイジが陰湿極まりないのだ。言ってみればストーカー状態なワケで、その様子はもはや気持ち悪いを通り越えてアブナイ。で、このアブナ過ぎる男を高良健吾がまた実に上手く演じてくれていた。血走った目に涙を溜めながら、自分が傷つけられたことだけを恨みに想い一方的に相手を憎む姿は正直下手なホラーよりも恐ろしい。
ただそこまで恐ろしい変質的かつ粘着的な男なのにも関わらず、恋の勝負が決した後は意外と簡単にルカの前から姿を消してしまったのがなにやら拍子抜けだった。それにしても前半の銀映館の話とルカのヤバイ恋の話がどうしても繋がらない…と思いきやラストに来てそれがきちんと一つに収斂されていた。それはルカがどうして銀映館から一歩も外に出ないかの真の理由に繋がっていたのだ。なるほどこれはこれで気持ちの良いまとめ方だと思う。やや都合の良過ぎるストーリー展開が気になるものの、ルカと恵介の川べりの初々しくも清々しいキスシーンが全てを洗い流してくれた。ちょっとミステリアスでノスタルジックな青春ラブストーリー、こんな物語が嫌いじゃない。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:銀映館は実際の劇場なのかしらん?
総合評価:67点
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