ディヴァイド/The Divide
壊れ行く人間を観察した映画 |
あらすじ
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ある日突然ニューヨークが大爆撃にさらされ、住んでいたアパートの地下シェルターへと逃げ込んだ男女9人。彼らが極限状態に追い込まれていく姿をつぶさに描いた隔離シチュエーションスリラーだ。「ディヴァイド」とは良くつけたもので、コトバの持つ意味通り、世界中から彼らだけが“隔離”されている状況であったり、彼ら9人が最初はある程度は仲間でありながらもやがて皆自分本位に“分離”していく状況を映し出している。意味も解らないままに徐々に極限状態に追い込まれていく人間たちが一体どういう行動をとっていくのか。実はストーリー上謎が謎のまま放置されていたり、納得が行かない部分もいくつかあるのだが、それも含めて登場人物の思考を疑似体験できるとも言える。
9人が逃げ込んだシェルターは元々はミッキー(マイケル・ビーン)の持ち物だった。必然的に彼が主導権を握って行く事になる。彼の話を聞いているとどうも外では核戦争が起こり、放射能で汚染されているようだ。この辺は字幕だけ追っているとやたらと思わせぶりに聞こえるだけなのだけれど、彼の口から「ジャパニーズ、ナガサキ、」という単語が聞き取れる時点でほぼ間違いないだろう。それにしてもどうしてちゃんと訳さないのか。ところで本当に核攻撃を受けたのなら、あんな鉄の扉一枚程度で放射能を防げるのか?などと思っているうちに、防護服に身を包んだ何者かが侵入してくる。一切の説明も無くただ銃を突きつけられる9人。私たちも彼らも一体何が起こっているのか混乱気味だ。
そして9人うちの一人マリリン(ロザンナ・アークエット)の娘ウェンディ(アビー・シックソン)は浚われるが、何とか謎の集団を撃退する。本当に一体何が何だかよく解らない話の展開なのだが、少なくとも彼らがこのシェルターに閉じ込められたと言うことだけは解った。もっともこの後仲間の一人ジョシュ(マイロ・ヴィンティミリア)が外を偵察したことがきっかけで鉄の扉を溶接され、本当の意味で閉じ込められることになるのだが…。それにしても人間の心など実に脆いもので、多少なりとも希望が抱けているうちは理性を保てるものの、それが消え去り絶望が芽生えると本能むき出しで生きようとする。たちが悪いのは絶望は理性で否定できないということだ。
薄暗いシェルターに閉じ込められ、食料は残り僅か、水もまともに使えないという中で、一番最初に絶望に支配され、その絶望から逃れるために狂気に身を任せたのは娘を奪われたマリリンだった。更に、殺した防護服の男の体が腐敗してきたため、斧でバラバラにする役を請け負ったボビー(マイケル・エクランド)も後から考えるとその行為そのものが既に正気の沙汰ではない。絶望と狂気が伝播していく様子は決して過激ではないが、深く静かに染み渡るようで恐ろしい。ミッキーが食物を隠していたことでボビーやジョシュたちは彼を拷問にかけ、やがてその食物を支配した彼らはシェルター王国の支配者となるのだった。こんな状況の中、ギリギリで正気を保ち続けている人間がいた。
エヴァ(ローレン・ジャーマン)だ。マリリンが早々に身体を捧げて被支配による自己防衛を図ったのに対し、彼女は決然とその道を拒む。弱肉強食の世界の中で、あからさまに人間の弱さと強さとは何なのかが描かれているところが面白い。人間としてのプライドを失わず戦い続ける道を選んだエヴァがクローズアップされることで、私たちは無意識に人としての良心を彼女に託して観てしまう。それは妙な仲間意識でもあり同情でもあるのかもしれない。だがそれだけに最後の最後での彼女の行動は、ある意味裏切り行為とも取れるものだった。この物語には何も救いがない。そして最初にも書いたが、結局何が起こったのか明確にはされない。だがもしかしたらそれは作った監督本人にも解らないのではないだろうか。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:あんまり楽しい作品とは言えないかな…
総合評価:60点
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