星の旅人たち/The Way
マーティン・シーンが主演、息子エミリオ・エステベスが製作・監督・脚本・出演を務めたヒューマン・ロードムービー。聖地巡礼の途中に事故で亡くなった息子の志を継いで巡礼の旅にでる父親の姿を描いている。共演にデボラ・カーラ・アンガー、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン、ジェームズ・ネスビット。スペイン北部の美しい風景にも注目したい。 |
エミリオとマーティンだからこその作品 |
あらすじ
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世界遺産サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路を息子の志を継いで旅する一人の老人の姿を見つめ続けた文字通りロードムービーだ。主人公トム(マーティン・シーン)は眼科医で息子ダニエルとは折り合いが悪く長い間会っていなかった。ところがある日スペインの警察から電話が入る。それはダニエルが巡礼の序盤、ピレネー山脈で事故にあって死んだというものだった。トムは直ぐに遺体の確認に向い、変わり果てた息子の姿と対面する。一体息子は何を思って巡礼の旅などに出ようと思ったのか。トムはダニエルの遺灰を持ち、息子の残したバックパックを背負って旅立つのだった…。何の予備知識も持たずに鑑賞した身としては、息子がエミリオ・エステヴェスだったことにまず驚いた。
実はこの作品、エミリオが製作・監督・脚本を務めていた。久しく出演作を観ていなかったが、年齢を重ねてより一層父マーティンにソックリになったなぁと感じる。息子とのコミュニケート不足は何が原因なのか、現在のダニエルは一体何をしていたのか、その辺は全く語られることは無いが、それはある意味観客もトムと同じ立場におかれているのかもしれない。ところでこの巡礼の旅、全長800km以上にも渡り、大人が早足で歩いても約3ヶ月は掛かる苦難の道のりだそうだ。余談だが日本でも四国八十八箇所のお遍路は1200km以上ある。さて、それだけの長さの旅ともなると同じ目的を共有する仲間が出来る。気難しく人を寄せ付けないトムとてもそれは例外ではなかった。
ダイエット目的の人懐こくておしゃべりなオランダ人・ヨスト(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)、ヘビースモーカーのカナダ人女性・サラ(デボラ・カーラ・アンガー)、スランプに陥った旅行ライターのアイルランド人・ジャック(ジェームズ・ネスビット)の3人がそうだ。全員が一編に仲間になるわけではなく、道中順番に加わっていくのだが、トムはそのいずれにも心を閉ざしたままスタスタ自分のペースで歩いて行く。しかしだからといって残りの3人が彼を無視するとか相手にしないとかではなく、積極的にコミュニケーションを図ろうとするというのがいかにも欧米的だ。スペイン北部ガリシア州の牧歌的で何も無い風景は、正にどこまでも道が続くといった感じ。
日本のお遍路のように峠道を行くことで修行するかのようなイメージとは違い、見るからに心が解放されるような風景にも関わらず、トムの目にはそんなものは一切映っていない。その姿はまるで自らに罰を与えるかのようにも見える。途中、ゴルゴダの丘に向かうキリストを思わせる一行、十字架を背負い背中に自ら鞭を打ち付ける巡礼者たちを目撃するのだが、それを見つめるトムの表情が印象的だった。ジプシーの住む町でトムのバックパックが盗まれた時のエピソードも興味深い。盗んだ少年の父親はトムに「人の信心深さと宗教は何の関係もない」と語るのだが、これなどむしろ日本人には何となくしっくりくる思考で、キリスト教徒ともに生きる欧米人には理解できるのだろうかと思ってしまう。
そんなある日、とある町でランチを取っている時、トムはワインを飲みすぎて悪酔いし警察に逮捕されるハメに…。これまで積極的にコミュニケートせずに堪っていた仲間への鬱憤を酒の力に任せて一気に吐き出した格好だ。ところがそんな彼を保釈金を積んで助け出すのもまた3人の仲間だった。そこでトムは気付くことになる。おしゃべりだろうが陽気だろうが、人は誰でも心に様々な想いを抱いていることを。ましてこの巡礼はハイキング程度で済むわけではないのだ。そこからトムは徐々に仲間たちと打ち解けていく。目的地であるヤコブの墓やサンティアゴ・デ・コンポステーラの教会は、何がある訳でもないのだが、自然と頭を垂れてしまうような歴史の重みを感じる。
この巡礼の旅は最終目的地で巡礼証明書がもらえるのだが、そこに自分の名前ではなくダニエルの名前を書き込んでもらうトムの心がなんだか嬉しい。残念ながら亡くなってしまったけれど、ようやく父と息子が解り合えた気がするからだ。エミリオは言う「この映画で彼が演じる人物は、俳優として、男として、人間としての本当のマーティンを表している」と。ラストシーンでのダニエルの表情はまさに父に対する息子の深い愛情とリスペクトに満ちていた。この2人だからこそ成立する作品なのだと思う。ちなみに、また映画を観て一度は訪れたい場所が増えてしまった(笑)
個人的おススメ度4.0
今日の一言:チャーリーの方は…(苦笑)
総合評価:79点
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