崖っぷちの男／Man on a Ledge

『アバター』、『タイタンの戦い』のサム・ワーシントン主演のサスペンスアクション。マンハッタンの高級ホテルの窓の外、縁に立って今にも飛び降りようとする男がいた。彼の目的は一体何なのか…。共演には『スパイダーマン』シリーズなどのエリザベス・バンクス、『第九軍団のワシ』のジェイミー・ベル、エド・ハリスらが出演。監督は本作が長編デビューのアスガー・レスが務める。
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崖っぷちとはよく言ったもので

　あらすじ　

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（普通にネタバレしてます、未見の方はご注意を。）
『アバター』以来どうもアクション重視で中身があまり無い作品が多かったサム・ワーシントンだが、この作品は文句無く面白かった。主人公ニック・キャシディ（サム・ワーシントン）は最初３０億円のダイヤモンド強盗の罪で服役している。刑事のマイク・アッカーマン（アンソニー・マッキー）が面会に来たことで、ニックも元々刑事だったことが解るのだが、どうやら彼は冤罪らしい。マイクはニックの父の余命が短いこと、葬儀には参列できるように取り計らうことを約束する。ここから既に我々は大きなサスペンスの渦中に放り込まれているのだが、そんなことは全く気がつかない。間もなく無くなった父の葬儀にニックは参列するが、そこで弟ジョーイと殴り合いのケンカをし止めに入った警官から拳銃を奪って脱走するのだった。

彼はその足でニューヨークの高級ホテルの高層階に部屋を取る。ルームサービスで最後の晩餐を取り、彼はおもむろに窓の外へ出ると僅か３０ｃｍの縁に立ち自殺をほのめかす。ここからが物語の本番だ。もとより主人公が単に自殺しようとする訳もない。一体ニックは何を考えているのだろう…。もうこの辺りからグイグイ物語りに惹き込まれる。自殺騒ぎの担当をする刑事はダンテ・マーカス（タイタス・ウェリヴァー）。個人的にはもう少し平凡な顔の俳優の方が良かった気はする。失礼ながらタイタスの悪人顔では、登場した時から彼が何らかの良からぬことに携わっているのではと疑ってかかってしまうのだ（苦笑）それはさて置き、ここでニックは何故か交渉人のリディア・マーサー（エリザベス・バンクス）を呼びつけるのだった。彼女はこの後ニックと共に話を進めて行くことになる。

この後この物語で最初のサプライズが起こる。ニックがホテルの下の道路を見下ろすとそこにはジョーイとその恋人アンジー（ジェネシス・ロドリゲス）が…。しかも彼らとニックは無線で会話をしているではないか。何と父の葬儀でのケンカは狂言で、この３人は何かを計画しているらしい。この展開は予想していなかった。この後ニック＆マーサーのホテル組とジョーイ＆アンジーの向かいのビル組という二元中継で物語は進んで行くのだが、向かいのビル組の方ではまるで『ミッション：インポッシブル』さながらのビル侵入劇が繰り広げられる。アンジーが中釣りになってセキュリティ解除をする姿は、正にオマージュとも言えるシーンだった。余談だがジェネシスが着替えのシーンで見せるあまりのナイスバディ、というかあのオッパイは反則としか言いようが無い（笑）

一方ホテル組では、ジョーイたちが何のためにそんなことをしているのか、そしてニックが嵌められた事件の真相が明らかにされて行く。少しづつ少しづつ、観ているものにあれこれ想像させるように情報を小出しにする展開の妙が素晴らしい。簡単に言うと向かいのビルに侵入しているのはニックの冤罪を証明するためで、ニックの狂言自殺騒動は全てそこから目を離すための陽動作戦なのだ。更にマーサーとのやり取りの中で明らかになるのがニックを嵌めた人間が誰かと言うことだった。この２つは一見パラレルに明らかになるのだけれど、ラストは見事に１つに収束する。ニックがダイヤを盗んだとされる相手デイヴィッドは名優エド・ハリスが演じているが、この人は高潔な紳士から本作のような卑劣な悪人まで違和感無く表現できるのがやっぱり上手い。

色々ありつつも見事にダイヤ強奪に成功するジョーイたち。そのダイヤをホテルの受付に預け……あれ？受付の担当が一番最初にルームサービスを持ってきた男ではないか。途中何故かニックにバーガーの差し入れを持ってきたりと、変な登場の仕方をするなとは思っていたがよもや彼までもが仲間だったとはこれはユニークな驚きだった。ところが更なる驚きが待っていた。それはニックの６０ｍダイブだ。無論スタントなのだろうが、一体このシーンはどうやって撮ったのだろう。ただでさえ高所恐怖症の人にはクラクラしそうな作品なのに、まさかそこから飛び降りるシーンまであるとは…。実はサム・ワーシントンその人も高所恐怖症で、ホテルの縁で撮影をしている時には本当にビビッていたそうだ。ともあれニックは最終的に自らの冤罪の証明に成功する。

一介の刑事がこれほどの大きな絵図を書いて実行できたことは疑問ではある。しかし物語を通して文字通りずっと崖っぷちの男がようやく崖っぷちからはなれられたことにはやはりホッとするし、釈放された後に集まったバーでジョーイがアンジーにプロポーズをするシーンは開放感からか歓びに共感してしまう。正にハリウッド映画らしいハッピーエンドに満足していたその時！映し出されたバーテンダーはホテルのルームサービス担当！何と彼はニックの父だった！！これには何たる痛快な作品なのだと止めを刺された感じだ。面白い。

個人的おススメ度4.0
今日の一言：てか６０ｍって普通に怖い（笑）
総合評価：80点

作品情報
キャスト：サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス、ジェイミー・ベル、アンソニー・マッキー、エド・バーンズ、タイタス・ウェリバー、ジェネシス・ロドリゲス、キーラ・セジウィック、エド・ハリス
監督：アスガー・レス
製作：ロレンツォ・ディ・ボナベンチュラ、マーク・バーラディアン
製作総指揮：ジェイク・マイヤーズ、デビッド・レディ
脚本：パブロ・F・フェンジェブス
撮影：ポール・キャメロン
美術：アレック・ハモンド
編集：ケビン・スティット
衣装：スーザン・ライアル
音楽：ヘンリー・ジャックマン
原題：Man on a Ledge
製作年：2012年
製作国：アメリカ
配給：ディズニー
上映時間：102分
映倫区分：G

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