プリンセス・カイウラニ/Princess Ka'iulani
ハワイ王朝最後の王女であるカイウラニの伝記ドラマだ。アメリカに併合されるハワイ最後の王女としての務めを果たす姿や、そのために実らなかった哀しい恋の物語を描いていた。主演はクオリアンカ・キルヒャー。共演に『トゥルー・グリット』のバリー・ペッパー、『アルマゲドン』のウィル・パットンが出演。監督は本作がデビュー作となるマーク・フォービー。 |
皮肉にも祖国に止めを刺したプリンセス |
あらすじ
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ハワイといえばカメハメハ大王、それでハワイが元は王国だったことを知っている人は多いと思う。しかしそれがいつまで続いていていつからアメリカの領土になったのかを知っている人は少ないのではないか。本作はそのハワイ王国最後の王女の生涯を描きつつ、同時にアメリカによるハワイ併合の歴史を描いた作品である。その王女とはカイウラニ(クオリアンカ・キルヒャー)、第8代カラカウア王の妹リケリケ王女とスコットランド人のアーチボルド・クレイグホーン(ジミー・ユール)の間に生まれたハワイ王国最後のプリンセスだ。本人の写真はエンディングで映し出されるが、これが非常に美しい女性で、残念ながらハワイ併合の翌年、1899年に23歳の若さで亡くなったそうだ。
演じているクオリアンカ・キルヒャーが実はドイツ生まれというのが意外だが、父親がペルー系ということもあって、ハワイの王女と言われても違和感を感じない。カラカウア王の時代にアメリカの策略で反王政派が反乱を起こし、カイウラニ王女は父アーチボルトの故郷であるイギリスへ脱出するのだが、実は本作の大半はこのイギリスでの生活だったりする。アーチボルト自身はカイウラニを旧友であるテオ・デイヴィーズ(ジュリアン・グローヴァー)に預けるとハワイにとんぼがえり、彼女はたった一人慣れない異国の地で生活を始めるのだった。ただテオの息子クライヴ(ショーン・エヴァンス)や妹アリス(タムジン・マーチャント)に優しくされることで頑なな心も徐々に開いて行く。
浅黒いポリネシアン系の肌をしたカイウラニは、上流階級の社会では格好の人種差別の対象だ。ただ、元々彼女はスコットランド人の父を持つだけに英語とハワイ語の両方をネイティヴに話すし、何よりちっぽけな島国とはいえれっきとした王族の一人として育てられている。誇り高く、理知的な彼女がそんな差別に対して心を傷めつつも、毅然とした姿を見せているのがとても印象的だった。そうこうするうちにカイウラニはクライヴと惹かれあって行く。おりしもハワイではカラカウア王がなくなり、叔母のリディアがリリウオカラニ女王となるのだが、カイウラニが彼女に正式に王位継承権1位に指名されたことで、彼女の幸せなラブストーリーにもヒビがはいることに…。
即ちリリウオカラニ女王の元でアメリカは軍事行動により強引にハワイに臨時政府を樹立してしまい、女王は幽閉されてしまうのだ。テオとクライヴはこの事実をカイウラニに隠した。何故ならクライヴとカイウラニは結婚することになっていたからだ。事実を知った彼女が激怒する気持ちは解るが「自分の国よりもあなたを選ぶと思うの?」とまで言い切るのには少々驚きを隠せない。あれほどまでに深く愛し合っていたのに…。カイウラニの愛国心の強さ、それは国を背負う王族としての責任感と矜持、そして幼い頃から受けてきた帝王教育の賜物なのだろう。合衆国大統領クリーブランドに臨時政府を支持しないように働きかける席のカイウラニの話術は非常に機智に富んだものだった。
しかしもはや時代の流れを押し戻すことは叶わない。ハワイ共和国成立の宣言がだされ、ほぼ同時に合衆国への併合が決定されることに。ここでもカイウラニの自らの国民を思う強い気持ちが良く出たエピソードが描かれていた。それは地主=白人しか持っていなかった選挙権をハワイの先住民にも与えるように合衆国議会に嘆願することだ。結果それは成功し、先住民にも合衆国の市民権が与えられることに。だが、これは同時に皮肉でもある。合衆国の市民権を得るということ、それはハワイ王国の完全な滅亡を意味するからだ。カイウラニは愛する国民のために、愛する祖国に止めを刺すことを余儀なくされたのである。アメリカの州であり、世界的な観光地としてのハワイしか知らない私にとって、ハワイの歴史に生きた悲運のプリンセスの存在を知ることが出来たのは収穫だった。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:普通に侵略の歴史だよなぁ…
総合評価:70点
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