リンカーン弁護士/The Lincoln Lawyer
マイクル・コナリーの同名ベストセラー小説を『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』のマシュー・マコノヒー主演で映画化。100万ドルの報酬目当てに金持ちのドラ息子の弁護を引き受けた異端の弁護士が、実は知らないうちに罠に嵌められていた…。共演には『レスラー』のマリサ・トメイ、ライアン・フィリップ、ウィリアム・H・メイシー。監督はブラッド・ファーマンが務める。 |
アメリカの弁護士モノは手堅く面白い |
あらすじ
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(ネタバレで書いてます、ご注意を。)
リンカーン弁護士というからエイブラハム・リンカーンと関係でもあるのかと思いきや、主人公の弁護士ミック・ハラー(マシュー・マコノヒー)が高級車リンカーン・コンチネンタルを事務所代わりに使っているからだった(笑)ミックは有能な弁護士だが、時として犯罪スレスレの手法を使って依頼人の刑を軽くすることに成功していた。アメリカの弁護士が弱冠強引な手段を使うのはあちらのドラマを観ていると良くあることで、これは司法取引という制度が大きく関係している。要するに“無実”を訴えて裁判を争い負けて重い刑罰を受けるよりも、罪を認めてより軽い刑罰で済まそうという合理的な判断だ。言ってみればミックはアメリカらしい弁護士だと言える。
まず事の発端はミックがルイス・ルーレ(ライアン・フィリップ)という資産家の息子にかかった暴行容疑を晴らす依頼を受けたことから始まる。金持ちのボンボンとその過保護な母親・そして会社の弁護士と三者がそろうとまるでそれだけで何やら裏がありそうな雰囲気ではあるが、特に司法取引を一切拒否しあくまで裁判で無実を勝ち取るよう要求するルイスの姿には一抹の気持ち悪さを感じた。ミックの親友・私立探偵フランク(ウィリアム・H・メイシー)に事件の調査を依頼すると、どうも話がおかしいことに気付く。簡単に言えばルイスがミックに嘘をついていたということなのだが、展開としてルイスはこのままでは有罪必至な状況だった。
司法取引を拒否している以上このままでは実刑もあると頭を抱えるミックが被害者の写真をみているとふとあることに気付く…。と言うワケで、物語的にはここからが本番。実は被害者の顔写真がミックの4年前に扱った事件の被害者にそっくりだったのだ。おまけにその時犯人として起訴されたマルティネス(マイケル・ペーニャ)の言うことをミックは頭から信じず、冤罪を主張する彼に無理矢理罪を認めさせて司法取引の末に終身刑を“勝ち取った”のである。マルティネスにルイスの写真を見せると、果たして彼は4年前に彼を目撃していた。要するにルイスは4年前に娼婦・ドナを殺しその罪をマルティネスに被せたということで、今回の犯人も彼である疑いが濃厚になってきたのだ。
ここで初めていつも自信に満ち溢れた彼に後悔の念が浮かぶ。それにしても本作だけでなく司法取引の矛盾を描いた作品を観るたびにアメリカの司法制度が怖くなってくる。ここでミソなのが、弁護士はその職務上知りえた秘密を決して明かしてはならないという秘匿特権。つまりミックはルイスの4年前の殺人についてもそれを外部には漏らせないのだ。これで彼は4年前は無実の人間を有罪にし、今回は真犯人を無罪にしなければならないという二重の業を背負うこととなる。そう、結局ルイスは最初から全て計算づくでミックに弁護を依頼してきたのだ。ルイスは娼婦をレイプして殺すサイコ野郎な一面より、金持ちの持つ嫌らしさの方がより強く描かれていたと思う。
絶対的な自信を持つ悪党はミックに脅しをかけ、しかもそのために親友フランクが殺される。一体ここからどう逆転する目があるのか…。本作ではそれをルイスの裁判を通じて描いて行く。ミックの「ちょとした秘策」はこれが結構唸らされるのだが、中々全容が明らかにならないだけに目はスクリーンに釘付けだ。キーとなっているのは無罪にする証人が4年前の殺人を有罪にする証人ということ。これは実は伏線があるのだが、流石にそれは気がつかなかった。最終的には“無罪”でも“無実”ではないという結末に驚くと同時に、そこまで溜まりに溜まった鬱憤を晴らしてくれるのは間違いない。この作品、続編も作れそうだが、テレビの連ドラ辺りで見たほうが楽しめそうな気もする。
【 種明かし 】
ルイスが最初に拘留されていたときに同じ房にいたミントンがミックの顧客であるレジーと同じ薬物治療の病院にいたことである作戦を思いつく。
ミントンは過去に偽証したことがあり、仲間を4回も密告したことがある男だった。
そんな男がルイスの4年前の殺人事件について証言し、しかも今回の事件も彼がやったと証言。
裁判長は偽証経験のある男に証言をさせ、陪審員に対して被告人のイメージを騙ったとして指示評決で無罪を言い渡す。
しかし4年前の事件でルイスは再逮捕される。
フランクが殺されたのはルイスが4年前の被害者ドナの家の前で駐禁切符を切られていたことに気付いたから。つまりドナ殺害の証拠を掴んだから。
犯行は息子を守るために母が行ったのだが、その母がミックを襲う。
九死に一生を得たミック、全てが白日の下にさらされる。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:「BONES」のミカエラ・コンリン発見♪
総合評価:70点
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