少年は残酷な弓を射る/We Need to Talk About Kevin
ライオネル・シュライバーの同名原作小説を映画化。恐ろしい事件を引き起こした息子の母親が、息子が生まれてから現在までを回想しつつ心の葛藤に苦しむ姿を描いている。主演に『ミラノ、愛に生きる』 のティルダ・スウィントン。共演に『おとなのけんか』 のジョン・C・ライリーが出演している。監督は『モーヴァン』のリン・ラムジー、製作総指揮にスティーヴン・ソダーバーグが参加。>>公式サイト
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途中までは強烈なスリラー映画にも思えたが、最後には究極のラブストーリーにも思えた珍しい作品。とある女性が目を覚まし家の外に出ると玄関と窓に赤いペンがぶちまけられている…。一体何なのかサッパリ解らないまま物語は静かに始まるのだった。この女性はエヴァ。元作家の彼女は何やら特定の人間を極端に避けているように見える。というより近隣の住人がみな彼女を避けているようだ。現在の彼女がどういった状況に置かれているのかは、この後彼女の回想を通じて徐々に明らかになって行く。過去の回想シーンになると現在と違ってエヴァがショートカットになってくれるので、時系列の区別がとてもつきやすくて親切設計だ。彼女には夫に息子、娘がいてそれなりに幸せな生活のようだった。
夫フランクリンがジョン・C・ライリーと言うのが場の空気を柔らかくしてくれるものの、娘セリア(アシュリー・ガーラシモヴィッチ)が左目にアイパッチをしているのを観ると不気味さがこみ上げてくる。そもそもタイトルがタイトルだ。“少年”とは当然息子ケヴィン(エズラ・ミラー)の事だろうし、だとするなら彼が妹の左目を…と想像してしまう。長じたケヴィンは途中少年院で登場する。従って彼が何がしかの犯罪をしたのは間違いないワケだが、それとセリアの左目が一体どう関わってくるのか。セリア役のアシュリーがこれまた実に可愛らしい少女だけに、観ている方としては真相を知りたい気持ちはありつつも、それを観たくない気持ちも湧いてきてしまった。
モヤモヤした気持ちを抱いたまま、時は更にエヴァがケヴィンを妊娠・出産した当時まで遡る。とにかくエヴァが抱っこしても全く泣き止まない赤ん坊のケヴィン、フランクが抱っこすると直ぐに泣きやむ様子は、生まれながらにしてエヴァに敵愾心を剥き出しにしているかのようだ。実はここが本作のポイントである。ケヴィンは徐々に成長するものの、恐ろしいほどにエヴァに対して嫌がらせを仕掛け続ける。7,8歳になってもオムツはとれず、わざと大便をもらして見せたりするのだが、かといって知能的に障害があるのではない。むしろ頭は一般よりも良いようで、だから余計にエヴァとしてはどうして良いのか解らない。大人のエヴァの心を鋭く洞察した上での嫌がらせはそれは酷いものだった。
あまりに激しい嫌がらせは、まるでエヴァという女性の人間性のうち悪意だけを抽出して生まれてきたのではないかと思わせるほどだ。父フランクの前では無邪気な子どもを演じて見せるその姿は、まるで『エスター』 の主人公エスターを彷彿とさせる邪悪っぷりで、そんなところからもしかして本作はホラーか、スリラー映画ではないかとすら思ってしまった。ティルダ・スィントンは、失礼ながら薄幸そうな顔立ちも幸いして、母親としての愛情と憎しみの両方を内包する複雑な葛藤を見事に演じていたし、ジョン・C・ライリーの妻の苦しみを全く理解しない能天気な父親ぶりは相当イラつかせられる。しかし何と言っても本作で素晴らしかったのはケヴィン役の3人だろう。
特に6~8歳のケヴィンを演じたジャスパー・ニューウェルは笑顔がとても愛くるしい男の子だが、それだけにそれが悪意に変わると正直相手が子どもでも殺意を覚えるほど憎たらしかった。そして長じたケヴィンを演じるエズラ・ミラーの邪悪そのものの瞳と、生命に対する尊厳が全く感じられない行動はまさに悪魔そのもので、現在のエヴァが置かれている状況を引き起こしたのはケヴィンだと自然に確信させられる。大体彼が幼くして弓矢をフランクリンに貰った時点で未来は決まっていたのだ。それにしても妹や弟が出来ると、自分に対する親の興味が薄れることで苛立ちを覚えるというのは良くあるが、セリアが生まれてから何年も過ぎてから彼女に危害を加えるとは、ケヴィンの想いの強さは恐ろしい。
それがどうして同級生に向かったのかは解らないが、ともかく同級生に対して“少年は残酷な弓を射る”のだった。これは恐ろしいほどにネタバレなタイトルだったことにちょっと唖然とした(苦笑)フランクリンやセリアまでも射殺されている姿になんとも言えず嫌な気持ちにさせられたが、最後の最後、大人の刑務所に移送される直前のケヴィンがエヴァに見せたその表情はある意味もっとショックだった。柔らかく優しく、甘えるような目からは母に対する愛情がはっきり見てとれたのだ。つまりもしかしたら彼は最初から母の愛を求めていただけなのかもしれない…。ただその求め方が究極的過ぎただけ、もっと言えば全てを超越して自分だけを愛して欲しかったということなのかもしれない、そんな風に感じた。社会から孤立した母親、残された家族はケヴィンだけ、いくら憎んでも息子は息子である。エヴァはこの後一体どうするのだろうか…。
個人的おススメ度4.0 今日の一言:セリアのその描写がなくて良かった…総合評価:80点
作品情報 キャスト :ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラー監督 :リン・ラムジー製作 :リュック・ローグ、ジェニファー・フォックス、ロバート・サレルノ製作総指揮 :スティーブン・ソダーバーグ、クリスティーン・ランガン、ポーラ・アルフォン、クリストファー・フィッグ、ロバート・ホワイトハウス、マイケル・ロビンソン、アンドリュー・オア、ノーマン・メリー、リサ・ランバート、リン・ラムジー、ティルダ・スウィントン原作 :ライオネル・シュライバー脚本 :リン・ラムジー、ローリー・スチュワート・キニア撮影 :シーマス・マッガーベイ美術 :ジュディ・ベッカー編集 :ジョー・ベニ衣装 :キャサリン・ジョージ音楽 :ジョニー・グリーンウッド原題 :We Need to Talk About Kevin製作年 :2011年製作国 :イギリス配給 :クロックワークス上映時間 :112分映倫区分 :PG12
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» 少年は残酷な弓を射る [Memoirs_of_dai]
SHE NEED“ED” TO TALK WITH KEVIN
【Story】
作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、妊娠を機にそのキャリアを投げ打たざるを得なくなる。それ故に生まれてきた息子ケヴィン(エズラ・ミラー)と...... [続きを読む]
受信: 2012年7月 4日 (水) 00時14分
» 『少年は残酷な弓を射る』 2012年6月20日 京橋テアトル試写室 [気ままな映画生活(適当なコメントですが、よければどうぞ!)]
『少年は残酷な弓を射る』 を試写会で鑑賞しました。
京橋テアトルは初めて行きました
椅子は結構好きな感じですが、、、カーテン空いた時の違う人の ”スクリーン小っさ” のつぶやきに同感(笑)
段差が少ないので1番前か3列目が良さそうな感じですね。(3列目は2列目と半分ずれているので)
【ストーリー】
自由を重んじ、それを満喫しながら生きてきた作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、妊娠を機にそのキャリアを投げ打たざるを得なくなる。それゆえに生まれてきた息子ケヴィン(エズラ・ミラー)との間にはど... [続きを読む]
受信: 2012年7月 4日 (水) 00時21分
» 少年は残酷な弓を射る / WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN [我想一個人映画美的女人blog]
ランキングクリックしてね larr;please click
NYで去年の12月、ポスターと予告篇みて日本にきたら観ようと思ってた作品
ティルダ・スウィントン主演。イギリスの女性作家に贈られる文学賞として著名なオレンジ賞に輝く、
ライオネル・シュライバーの小説を...... [続きを読む]
受信: 2012年7月 4日 (水) 00時42分
» 『少年は残酷な弓を射る』 (2011) / イギリス [Nice One!! @goo]
原題: WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN
監督: リン・ラムジー
出演: ティルダ・スウィントン 、ジョン・C・ライリー 、エズラ・ミラー
公式サイトはこちら。
「イギリスの女性作家に贈られる文学賞として著名なオレンジ賞に輝く、ライオネル・シュライバーの小説...... [続きを読む]
受信: 2012年7月 4日 (水) 08時29分
» 「少年は残酷な弓を射る」ただそれだけが欲しかった [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
ラストはハッピーエンドである。
満席の劇場で、これがハッピーエンドだと思って涙を流しているのは、私くらいだったかも。
冒頭からラストまで、胸が締め付けられるような胸騒ぎの連続。
忘れる事のできない今年の1本になりそうだ。... [続きを読む]
受信: 2012年7月 5日 (木) 14時52分
» 映画「少年は残酷な弓を射る」 感想と採点 ※ネタバレあります [ディレクターの目線blog@FC2]
映画『少年は残酷な弓を射る』(公式)を6/30の初日にTOHOシネマズ シャンテにて劇場鑑賞。
採点は、★★★☆☆(5点満点で3点)。100点満点なら50点にします。なお、原作本『We Need To Talk About K...... [続きを読む]
受信: 2012年7月 5日 (木) 14時57分
» 少年は残酷な弓を射る・・・・・評価額1450円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
なぜ少年は狂気の弓を射たのか?
赤ん坊の頃から実の母親に懐かず、成長するに従って異様な悪意を無慈悲にぶつける様になる奇妙な少年と、息子への愛と憎悪の間で葛藤する母親。
やがて息子が引き起こした...... [続きを読む]
受信: 2012年7月 6日 (金) 23時50分
» 少年は残酷な弓を射る [ダイターンクラッシュ!!]
2012年7月5日(木) 19:30~ TOHOシネマズシャンテ1 料金:0円(フリーパスポート) 『少年は残酷な弓を射る』公式サイト フリーパスポート2本目。 宅間守のような生まれながらの悪人のような子供の話。 怖い子供というと「オーメン」とか「エスター」とかあるが、あのようなホラーのエンターテイメントとは、性質が異なるので、かなり疲れる。 どうやって決着をつけるかと思ったら、意外な終わり方をしてやんの。 ちょっと納得がいかない。 ストーリーに「自由を重んじ、それを満喫しながら生きてき... [続きを読む]
受信: 2012年7月 7日 (土) 23時45分
» 少年は残酷な弓を射る [映画 K'z films 2]
Data 原題 WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN 監督 リン・ラムジー 原作 ライオネル・シュライバー 出演 ティルダ・スウィントン
ジョン・C・ライリー
エズラ・ミラー 公開 2012年 6月 [続きを読む]
受信: 2012年7月 8日 (日) 21時38分
» ◆『少年は残酷な弓を射る』◆ ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2011年:イギリス映画、リン・ラムジー監督&脚本&製作総指揮、ライオネル・シュライバー原作、スティーヴン・ソダーバーグ製作総指揮、ティルダ・スウィントン製作総指揮&主演、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラー出演。... [続きを読む]
受信: 2012年7月 8日 (日) 23時21分
» 『少年は残酷な弓を射る』いったい誰に?! [Healing]
少年は残酷な弓を射る ★★★★ 「母さん、僕が怖い?」 男の子の母としては聞き捨てなりません、このキャッチ。 この映画で、ある少年の母親は、アルコールと睡眠薬で朦朧とするなか、 記憶の断片をたぐり寄せながら、 自分の息子が起こした、ある凄惨な事件に至るまでを回想していきます。 私の子育ては、いつ、どこで、何を誤ってしまったんだろう。。。 彼女のその問いととも... [続きを読む]
受信: 2012年7月10日 (火) 23時51分
» 『少年は残酷な弓を射る』について話し合わねばならない [映画のブログ]
世界でも、自国の歴史の上でも、もっとも平和な時代を迎えた日本。
けれども、残念ながら凶悪犯罪はゼロにはならない。そしてどんな犯罪者にも親はいる。
もしも我が子が凶行に走ったとき、「あの子な...... [続きを読む]
受信: 2012年7月12日 (木) 08時15分
» 少年は残酷な弓を射る/子供は無垢で愛すべき存在、という脅迫 [映画感想 * FRAGILE]
少年は残酷な弓を射るWE NEED TO TALK ABOUT KEVIN/監督:リン・ラムジー/2011年/イギリス
「勉強もスポーツもよくできた、とっても真面目な良い子でした」
「邦題がそもそもネタバレである」という話を聞いていたのと、予告の感じも含め、なにがどうなるのかはだいたい想像ついていました。では、それをどう描くのかなと思ったら、これはもうたいへんな悪意映画で…暗い気持ちに…なるよね…。
あらすじ:息子のことが、わからない。
キャリアウーマンだったエヴァ(ティルダ・ス... [続きを読む]
受信: 2012年7月12日 (木) 12時17分
» 少年は残酷な弓を射る [心のままに映画の風景]
作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、妊娠を機にそのキャリアを投げ打たざるを得なくなる。
戸惑いの中で生まれてきた息子ケヴィンは、幼い時からエヴァに心を開こうとはしなかった。
賢く美しい...... [続きを読む]
受信: 2012年7月13日 (金) 22時44分
» 「少年は残酷な弓を射る」:不安で不快なサスペンス [大江戸時夫の東京温度]
映画『少年は残酷な弓を射る』は、観ている間ずっと「早く終わってくれえ!」と叫びた [続きを読む]
受信: 2012年7月15日 (日) 00時22分
» 映画「少年は残酷な弓を射る」深層心理の片鱗を見る [soramove]
「少年は残酷な弓を射る 」★★★★
ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、
エズラ・ミラー出演
リン・ラムジー監督、
112分、2012年6月30日公開
2011,イギリス,クロックワークス
(原題/原作:We Need to Talk About Kevin )
人気ブログランキングへ">>→ ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい←
「予告は謎めいていて
... [続きを読む]
受信: 2012年7月16日 (月) 19時35分
» 「少年は残酷な弓を射る」 [ヨーロッパ映画を観よう!]
「We Need to Talk About Kevin」2011 UK/USA
エヴァに「フィクサー/2007」「倫敦(ロンドン)から来た男/2007」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生/2008」「バーン・アフター・リーディング/2008」「リミッツ・オブ・コントロール/2009」「ミラノ、 愛に生きる/2009」のティルダ・スウィントン。
フランクリンに「おとなのけんか/2011」のジョン・C・ライリー。
ケヴィンにエズラ・ミラー。
監督、脚本は「モーヴァン/2002」のリン・ラ... [続きを読む]
受信: 2012年7月17日 (火) 19時39分
» 『少年は残酷な弓を射る』 [beatitude]
自由奔放に生きてきた作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)はキャリアの途中で、夫フランクリン(ジョン・C・ライリー)との間に子供を授かった。ケヴィンと名付けられたその息子は、なぜか幼い頃から、母親であるエヴァにだけ反抗を繰り返し、心を開こうとしない。やがて...... [続きを読む]
受信: 2012年7月20日 (金) 00時48分
» 「少年は残酷な弓を射る」 [みんなシネマいいのに!]
自由奔放に生きてきた作家のエヴァだが、妊娠を機にそのキャリアを捨てざるおえなか [続きを読む]
受信: 2012年7月20日 (金) 06時43分
» 少年は残酷な弓を射る [キノ2]
★ネタバレ注意★
今年の「凄い映画を観た」はこの映画かもしれない。
映画というか、主演のティルダ・スウィントンが凄い。
凄いスウィントンは2011年の英国アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞他、多数の映画賞にノミネートされています。リム・ランジー監督によるイギリス映画です。
旅行関係のライターとしてバリバリ働いていたエヴァ(ティルダ・スウィントン)にとって、突然の妊娠、その結果否応なしに閉じ込められる「母親」の役割は、必ずしも手放しで歓迎できるものではなく、ひたすら歓喜ム... [続きを読む]
受信: 2012年7月21日 (土) 08時19分
» 少年は残酷な弓を射る [Said the one winning]
自由を重んじ、それを満喫しながら生きてきた作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、妊娠を機にそのキャリアを投げ打たざるを得なくなる。それゆえに 生まれてきた息子ケヴィン(エズラ・ミラー)との間にはどこか溝のようなものができてしまい、彼自身もエヴァに決...... [続きを読む]
受信: 2012年7月23日 (月) 13時54分
» 少年は残酷な弓を射る [佐藤秀の徒然幻視録]
トマト祭りと胎内回帰願望
公式サイト。ライオネル・シュライバー原作、イギリス映画。原題:We Need To Talk About Kevin。リン・ラムジー監督、ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリ ... [続きを読む]
受信: 2012年7月24日 (火) 22時29分
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