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2012年7月 4日 (水)

少年は残酷な弓を射る/We Need to Talk About Kevin

Photo ライオネル・シュライバーの同名原作小説を映画化。恐ろしい事件を引き起こした息子の母親が、息子が生まれてから現在までを回想しつつ心の葛藤に苦しむ姿を描いている。主演に『ミラノ、愛に生きる』のティルダ・スウィントン。共演に『おとなのけんか』のジョン・C・ライリーが出演している。監督は『モーヴァン』のリン・ラムジー、製作総指揮にスティーヴン・ソダーバーグが参加。
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これは究極の親子愛物語か?!

book あらすじ book

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途中までは強烈なスリラー映画にも思えたが、最後には究極のラブストーリーにも思えた珍しい作品。とある女性が目を覚まし家の外に出ると玄関と窓に赤いペンがぶちまけられている…。一体何なのかサッパリ解らないまま物語は静かに始まるのだった。この女性はエヴァ。元作家の彼女は何やら特定の人間を極端に避けているように見える。というより近隣の住人がみな彼女を避けているようだ。現在の彼女がどういった状況に置かれているのかは、この後彼女の回想を通じて徐々に明らかになって行く。過去の回想シーンになると現在と違ってエヴァがショートカットになってくれるので、時系列の区別がとてもつきやすくて親切設計だ。彼女には夫に息子、娘がいてそれなりに幸せな生活のようだった。

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夫フランクリンがジョン・C・ライリーと言うのが場の空気を柔らかくしてくれるものの、娘セリア(アシュリー・ガーラシモヴィッチ)が左目にアイパッチをしているのを観ると不気味さがこみ上げてくる。そもそもタイトルがタイトルだ。“少年”とは当然息子ケヴィン(エズラ・ミラー)の事だろうし、だとするなら彼が妹の左目を…と想像してしまう。長じたケヴィンは途中少年院で登場する。従って彼が何がしかの犯罪をしたのは間違いないワケだが、それとセリアの左目が一体どう関わってくるのか。セリア役のアシュリーがこれまた実に可愛らしい少女だけに、観ている方としては真相を知りたい気持ちはありつつも、それを観たくない気持ちも湧いてきてしまった。

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モヤモヤした気持ちを抱いたまま、時は更にエヴァがケヴィンを妊娠・出産した当時まで遡る。とにかくエヴァが抱っこしても全く泣き止まない赤ん坊のケヴィン、フランクが抱っこすると直ぐに泣きやむ様子は、生まれながらにしてエヴァに敵愾心を剥き出しにしているかのようだ。実はここが本作のポイントである。ケヴィンは徐々に成長するものの、恐ろしいほどにエヴァに対して嫌がらせを仕掛け続ける。7,8歳になってもオムツはとれず、わざと大便をもらして見せたりするのだが、かといって知能的に障害があるのではない。むしろ頭は一般よりも良いようで、だから余計にエヴァとしてはどうして良いのか解らない。大人のエヴァの心を鋭く洞察した上での嫌がらせはそれは酷いものだった。

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あまりに激しい嫌がらせは、まるでエヴァという女性の人間性のうち悪意だけを抽出して生まれてきたのではないかと思わせるほどだ。父フランクの前では無邪気な子どもを演じて見せるその姿は、まるで『エスター』の主人公エスターを彷彿とさせる邪悪っぷりで、そんなところからもしかして本作はホラーか、スリラー映画ではないかとすら思ってしまった。ティルダ・スィントンは、失礼ながら薄幸そうな顔立ちも幸いして、母親としての愛情と憎しみの両方を内包する複雑な葛藤を見事に演じていたし、ジョン・C・ライリーの妻の苦しみを全く理解しない能天気な父親ぶりは相当イラつかせられる。しかし何と言っても本作で素晴らしかったのはケヴィン役の3人だろう。

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特に6~8歳のケヴィンを演じたジャスパー・ニューウェルは笑顔がとても愛くるしい男の子だが、それだけにそれが悪意に変わると正直相手が子どもでも殺意を覚えるほど憎たらしかった。そして長じたケヴィンを演じるエズラ・ミラーの邪悪そのものの瞳と、生命に対する尊厳が全く感じられない行動はまさに悪魔そのもので、現在のエヴァが置かれている状況を引き起こしたのはケヴィンだと自然に確信させられる。大体彼が幼くして弓矢をフランクリンに貰った時点で未来は決まっていたのだ。それにしても妹や弟が出来ると、自分に対する親の興味が薄れることで苛立ちを覚えるというのは良くあるが、セリアが生まれてから何年も過ぎてから彼女に危害を加えるとは、ケヴィンの想いの強さは恐ろしい。

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それがどうして同級生に向かったのかは解らないが、ともかく同級生に対して“少年は残酷な弓を射る”のだった。これは恐ろしいほどにネタバレなタイトルだったことにちょっと唖然とした(苦笑)フランクリンやセリアまでも射殺されている姿になんとも言えず嫌な気持ちにさせられたが、最後の最後、大人の刑務所に移送される直前のケヴィンがエヴァに見せたその表情はある意味もっとショックだった。柔らかく優しく、甘えるような目からは母に対する愛情がはっきり見てとれたのだ。つまりもしかしたら彼は最初から母の愛を求めていただけなのかもしれない…。ただその求め方が究極的過ぎただけ、もっと言えば全てを超越して自分だけを愛して欲しかったということなのかもしれない、そんな風に感じた。社会から孤立した母親、残された家族はケヴィンだけ、いくら憎んでも息子は息子である。エヴァはこの後一体どうするのだろうか…。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:セリアのその描写がなくて良かった…
総合評価:80点

作品情報
キャスト:ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラー
監督:リン・ラムジー
製作:リュック・ローグ、ジェニファー・フォックス、ロバート・サレルノ
製作総指揮:スティーブン・ソダーバーグ、クリスティーン・ランガン、ポーラ・アルフォン、クリストファー・フィッグ、ロバート・ホワイトハウス、マイケル・ロビンソン、アンドリュー・オア、ノーマン・メリー、リサ・ランバート、リン・ラムジー、ティルダ・スウィントン
原作:ライオネル・シュライバー
脚本:リン・ラムジー、ローリー・スチュワート・キニア
撮影:シーマス・マッガーベイ
美術:ジュディ・ベッカー
編集:ジョー・ベニ
衣装:キャサリン・ジョージ
音楽:ジョニー・グリーンウッド
原題:We Need to Talk About Kevin
製作年:2011年
製作国:イギリス
配給:クロックワークス
上映時間:112分
映倫区分:PG12

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