『潜水服は蝶の夢を見る』 あらすじ

ジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)が目覚めるとそこは病室だった。医者が入れ替わりやってきては彼に話しかける。彼はその問い全てに答えているのだが、どうも伝わっていないらしい・・・。医者の説明で、重度の脳梗塞で倒れ全身が麻痺している状態だと解る。唯一動かせるのは左眼のみだった。

意識ははっきりしている。しかも他人の話すことも完全に聞こえるし、理解もできる。しかしそれに対して彼が出来る反応は左眼の瞬きだけ。彼はロックト・インシンドローム(閉じ込め症候群)だった。

倒れる前、彼はELLE誌の編集長として活躍していた。妻と3人の子供はいるが、華やかな世界で自由気ままな生活を送っていたのだ。それが今ではこの有様・・・。言語療法士のアンリエット(マリ=ジョゼ・クローズ)から瞬きで話す方法を教えてもらった彼が最初に彼女に言った言葉は「死にたい。」だった。

自らの体に閉じ込められた状態、それはさながら水中に潜った重い潜水服を着ているようだった。しかし、彼にはまだ元気な時と全く変わらないものが残されていた、類稀な想像力と記憶力だ。彼はそれを頼りに瞬きで自伝を執筆することを決意する。そう、再びこの重い潜水服を脱いで蝶のように自由に羽ばたくことを夢見て-。

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